外れた先に
春風月葉
外れた先に
見慣れた景色、通い慣れた道、私は今日もいつも通りをなぞっていた。
ミャーと猫の聞きなれない鳴き声が聞こえ、私は背の高い建物の裏に隠れた薄暗い路地の方に視線を向けた。
一匹の黒猫が不気味な目でこちらを見てくる。
気がつけば見えない糸に引かれるように、私は路地の方へと歩いていた。
ガァガァと頭上では烏がうるさく鳴いている。
換気扇が忙しく回っている。
日の光が入ってこない細い道はそこだけがいつまでも夜のように感じた。
黒猫に着いて歩くといつのまにか会社の前の大通りへ戻ってきていた。
その日の帰り道、私は十数年ぶりに寄り道をした。
黒い案内人のいない私は二度目の路地を一人迷いながら歩いた。
朝には暗かったその道は人口の光で眩しく光っていた。
どこからかミャーという鳴き声が聞こえた。
私はその日、忘れていたものを思い出した気がした。
外れた先に 春風月葉 @HarukazeTsukiha
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