後編 ヴォゴラVSイクスノア -エイジ・オブ・デストロイヤーズ-
爆炎と断末魔が天を衝き、人々の慟哭が眼に映る世界を席巻する。自らの生存本能に従い、恐れ慄く衆愚は我先にと逃げ惑い、人類の産物による裁きを受けて行く。
空間を裂かんと振るわれた巨塔の如き尾が、我々の頭上を横切る瞬間――愚民の群れは金切声を震わせ、身を屈ませていた。
実に浅はかだ。彼の「神獣」の前にひれ伏したところで、自分達の運命が変わるとでも思っているのか。
事実、恐怖のあまり逃げ出すことさえ忘れた者達は、周囲から迫る崩落の余波に次々と飲まれていた。辛うじて今も生き延びているのは、自分が「生きている」と信じて疑わぬ者達だけだ。
そうだ、それで良い。
先人が払った犠牲を、痛みを忘れ、今また「核」が蔓延る世界に戻ろうとしている時代に――目を背けた衆愚よ。その「核」の化身となりて、生まれ出でた「神獣」の裁きを受けるのだ。
「
「ここにいては我々も――!」
私の後ろで、助手達が何かを叫んでいる。だが、「咆哮」に鼓膜を潰された今となってはもはや、何も聞こえはしない。
無論、言わんとしていることは分かる。無駄なことだ。今から逃げて、間に合う者などいるものか。
お前達には分からぬか。神の化身と呼ぶに相応しい、あの荘厳なる大牙。地を踏み締め、地を這う愚民に終焉を告げる大樹の如き両脚。そして、その全身を覆い尽くす黄金色の鎧。
それは紛う事無き、神の使徒。生存するに足る人類を導き、死すべき愚者に然るべき報いを与える、「方舟」の化身。
――人智を超える神に相応しい、
「イクスノアよ、神の子よ――!」
◇
核実験によって誕生した怪獣に、さらなる遺伝子改造を重ね「神獣」へと変異させた狂気の科学者――尾沢博士。
目黒区を火の海に塗り替える、その使途を生み出した彼は、「我が子」の炎に抱かれ塵と消えた。
日本の首都として栄えた大都市を焼き尽くす、審判の光。太陽の如きその煌めきは、死という至大の罰を以て人類の業を裁く。
それは生みの親を葬った今もなお、続いていた。アスファルトを踏み砕き、建物を薙ぎ倒し、その足元に横たわる数万という数の犠牲者を、一瞥もせず。
イクスノアと名付けられた神獣は、心を持たぬ方舟の化身として。本能が命じるままに、人類の粛清を続行している。
「あの怪獣を造った博士が、尾形の……?」
「君が気負うことはない。……今はただ、都民の避難を助けるだけだ。出来るな?」
「……そのつもりです」
海からではなく、都内の地下研究所から突然現れた60mもの新種怪獣。その予期せぬ異常事態に対処すべく、巨獣災害対策本部――「巨獣対」も動き出していた。
そうして、職員達が忙しく行き交う中。1年振りに
――
最愛の息子を怪獣に殺され、息子の同期がその怪獣を撃退したという事の顛末は、尾沢博士に狂おしいほどの憎悪と嫉妬を呼び込んでいたのだ。
彼は機獣と兜疾を否定するために、怪獣と近しい境遇の生物を見つけ出し、その生物を被験体に新たな「兵器」の開発を目論んだのである。機獣以上の力を持った人造怪獣の創出、ただそれだけのために。
だが結局、尾沢博士の力では実験による突然変異から誕生した「神獣」を御することは叶わず。暴走した方舟の化身は生みの親さえ殺し、恐るべき破壊者となってしまった。
沖局長は最初に神獣が出現した地点を調べ、目黒区内にある尾沢博士の研究施設の存在とその実態を突き止めていたのだが――兜疾にとってその事実は、辛いものでしかない。あの怪獣が生まれた一因が、自分にあるというのだから。
「……ッ」
ふと、目黒区の様子をタブレットで観てみれば。すでに出動している防衛隊の戦闘機や戦車が、次々と神獣により蹂躙されている光景が広がっていた。
これ以上の犠牲は、何としても食い止めねばならない。その一心で、兜疾が機獣のコクピットに乗り込もうとする――その時だった。
「兜疾っ!」
「……恋」
黒髪のショートヘアを揺らし、息を切らせて駆けつけて来た色白の美女。この男所帯の基地には似つかわしくない美貌を持つ彼女は、険しい表情のまま死地に赴かんとする兜疾を、心配げに見上げていた。
「……邪魔するな、仕事だ」
「そんな、今にも死にに行きそうな顔されたら……つい止めたくなっちゃうでしょ。もうちょっと、前向きな顔してよ」
「前なら、向いてる」
「……ぱっと見、そうは見えないんだけど」
偶然、
「何度も仲間を失って、尾沢も守ってやれなくて。そうまでして生きている俺の命に、何の意味があるのだろう。……ずっと、それを考えていた」
「……答え、見つかった?」
「あぁ。……今、目の前に在る」
どことなく、温もりを宿しているその瞳に射抜かれて。恋はバツが悪そうに視線を外してしまい、兜疾が機獣に乗り込む瞬間を見逃してしまう。
「……そういう気障な台詞、良くないなぁ。アイドル口説くとか、刺されても知らないよ」
死地に赴く彼への心配を、悟られたくなくて。コクピットのハッチが閉まった今、声が届くはずもないというのに――恋は桃色に染まる頬を背けながら、か細い声で呟いていた。
そんな彼女を、この基地に残して。鈍色と黒鉄色の鎧に身を固めた機獣は、基地の外へと歩み出して行く。
東京湾の海原へと、戦場と化した目黒区へと。
「54式装甲機獣……出るぞ!」
神獣の脅威から、1人でも多くの都民を守るために。尾沢博士の怨念を、この世界から消し去るために。
そして――
――だが、それほどの決意を以てしても。
◇
『射撃の可否を――!』
『まだ人が――!』
地獄の渦中であろうとも、人々は抵抗を続けていた。例え本当に、彼の神獣の行いが神の意志によるものであろうと――抗することなく死を待つなど、生物としての本能に反する。
彼らは種としての生存を賭けて。強大なる方舟の化身に、砲火を放つ。
――だが。戦車隊の総力を挙げようと、
人類の矛として立ち塞がった鋼鉄の戦士達は、誰一人として残ることなく――物言わぬ骸となりて、火の海に彩りを添えていた。原型を留めぬほどに打ち砕かれた機獣の装甲も、その一つとなっている。
「こ……こっ、ち。こっちに来る……!」
「い、いやぁあぁ!」
それは神獣にとっては所詮、邪魔な小蝿を払った程度に過ぎず――「選別」にも値せぬ、瑣末なことであった。
イクスノアは蒼い凶眼を揺らし、次の粛清へと移り始めた。その眼が映す先には、都心から逃れた無辜の人々がいる。
東京の大火を生き延び、選別を潜り抜けた彼らは――未来という方舟に乗せるにはまだ、多過ぎる。
それが、神獣の下した「審判」であり。その大顎に充填されて行く熱線の昂りが、震える人々に「判決」を告げていた。配線や内部の機械が露出し、もはや「機獣」の
「させ、るかよッ!」
両腕と大顎に搭載された、3門の機関砲。両肩に2門搭載された、大口径のレーザー砲。そして、背面の背鰭状になっている部位に内蔵された、多弾頭ミサイル。
持てる全ての火力を、一点にのみ注ぎ――機獣は神獣を排除するべく、人類の「炎」を解き放つ。眩く閃くふたつの熱線が翔び、銃弾の雨が空を駆け抜け、弾頭の嵐が降り注いで行った。
「……ッ!」
だが、その全てを以てしても。神獣の全身に備わる、黄金の皮膚を破るには至らず――彼の者の大顎から放たれる熱線が、その「返礼」となって帰って来た。
「ぐあぁあぁッ!」
熱線により機獣の首が斬り落とされ、轟音と共に頭部が墜ちる瞬間。激しい衝撃と共に、コクピットで火花が散り――目の前で弾け飛んだ機械の破片が、兜疾の肩や額に突き刺さっていく。
首をもがれた機獣が、倒壊したビルにもたれ掛かるように倒れると同時に――余波を受けた兜疾自身も、血達磨になっていた。
――そしてノアの方舟は、この救い難き時代を選んだ衆愚に。機獣だった鉄屑諸共、然るべき裁きを与える。
はず、であった。
「……!」
「あ、あぁ」
刹那。イクスノアの巨体が崩折れるように倒れ、傍らのビルを押し倒してしまう。衝撃のあまり車や家屋が吹き飛び、人々の視野を奪う砂嵐によって舞い上げられていく。
――それは、神獣の顔面に直撃した
神獣の転倒とビルの倒壊による轟音が天を衝き、人々は耳を抑え蹲る。もはやこれは、人智の及ぶ世界での
大火を背に起き上がる神獣は、己の使命を阻む邪魔者に牙を剥く。1年の沈黙を破り、東京湾の沖から訪れた――人類にとってのさらなる「脅威」に向かって。
「ヴォゴラ……!」
血みどろの額を拭い、兜疾がそう呟いた時――両の脚で大海を掻き分け、無人となった港へと迫る濃緑の「怪獣」は。人の手によって生まれ出でた紛い物の「
――失せろ。その鉄屑は、俺の獲物だ――
言語という概念があるわけではない。互いに存在し、互いの体を突き動かしているのは、生物としての本能のみ。
それでも彼の者は、猛り狂う眼光を以てその意思を伝え。神獣もまた、自らに仇なす怪獣の怒号に、咆哮によって応えていた。
イクスノアにも引けを取らない、堅牢なる濃緑の鎧。その鱗に守られた巨躯に、轟音と共にしなる尾。「粛清」ではなく「闘争」を追求する、真紅の眼。
神獣とは違い、自然の中から生まれ出でた破壊の化身。それが今、怪獣の姿となって――神を僭称する人工物に、真の裁きを下さんとしていた。
そして神獣もまた。眼前に立ちはだかる怪獣を、選別するまでもなく消し去るべき「害獣」と判断し――再び大顎に、灼熱を収束させていく。
それが。怪獣と呼ばれた濃緑の破壊者に、「開戦」を告げるのだった。
――やがて双方の熱線が激突し、さらなる災厄と爆炎が広がる時。
人類に裁きを下す真の「神」を選定する――
◇
互いに共鳴するかのように咆哮が響き合い、熱線が激突する。その余波で周囲の高圧線鉄塔も、蝋のように爛れ――消し飛ばされて行った。
だが、それほどの「力」の奔流が交錯する中であっても、双方は一歩も退くことなく。むしろ熱線の勢いを緩めぬまま、互いに歩を進めていた。
そして、目と鼻の先にまで双方が迫り合い。互いの大顎から、激突し続ける熱線が漏れ出して行く。
互いを噛み砕かんと牙と牙を突き立て合ったのは、その直後であった。鋼の如き皮膚さえ破る、巨大な刃が両者の肉に沈み込み、鮮血を噴き上げる。
さらに絶叫のような咆哮と共に、双方は相手の体内に熱線を注ぎ合っていた。仇敵を内側から焼き尽くす殺意の業火が、破壊者達を内側から滅して行く。
やがて、その全身に亀裂が走り。内部から破れた皮膚の隙間から、火炎が漏れ始めていた。大顎のみならず、身体中から放射される猛火に街全体が飲み込まれ、さらに被害が拡大して行く。
己ものとも全てを破壊する、闘争本能の化身達。彼の者達は自身の傷さえ顧みず、大樹の如き剛腕を振るい、その爪で互いを切り刻んでいた。
『龍崎……奴らは、刺し違えてでも相手を殺すつもりだ。戦うこと意外に、奴らの中には何もない』
「……人類のことなんざ、どうでもいいってことか。俺達なんざ、取るに足らない、とッ……!」
その激戦に巻き込まれながらも、機獣という棺桶に守られ一命を取り留めている兜疾は――人類が介在する余地のない死闘を前に、唇を噛み締めていた。
実質的に機獣を制していた怪獣でさえ、死を厭わぬ戦いを強いられるほどの神獣。その力はもはや、人類の矛たる機獣には遠く及ばない域にまで到達している。
他の追随を許さない、破壊者達だけの時代が。今この瞬間、世界を支配しているのだ。
機獣が倒されたことで既に、国連軍はこの目黒区への核攻撃を決断している。「開始」までのカウントダウンもすでに、30分を切っていた。
どちらが勝ち残ろうと、東京に未来はない。そして龍崎兜疾という人類の戦士も、機獣という名の棺桶と共に、核の炎で葬られる。
それはこの時点における決定事項であり――決して覆ることのない、運命であった。
「……!」
――そして、その運命を決定付けるかの如く。満身創痍の神獣が、己の尾を鞭のようにしならせ、怪獣を打ちのめしてしまった。
さらに轟音と共に転倒した怪獣へと、追い討ちを掛けるように――背を向けた神獣は、激しく尾を上下に振るう。重力と体重と、遠心力を活かした質量の暴力が、怪獣の巨体に容赦なく降り注がれた。
悲鳴のような、断末魔のような。怪獣の絶叫が天を衝き、目黒区のみならず東京全土へと響き渡る。
「ヴォゴラ……!」
自分が斃すはずだった、怪獣の最期。その望まぬ結末を前に、兜疾は操縦桿を握る手を震わせていた。
すでに兵器としての死を迎えている機獣は、彼の想いに応える力を持たず――骸のように眠り続けている。
そんな彼に、見せつけるかのように。神獣が大きく尾を天に振り上げ、「とどめ」の姿勢に入ったのは、その直後であった。
「……!」
すでに死に瀕している怪獣が、その一撃を浴びれば――亀裂だらけの命は、今度こそ跡形もなく砕け散る。
それが怪獣に課せられた「運命」なのだと、言外に告げるように――神獣の尾は、懺悔の暇もなく振り下ろされた。
弧を描き、人類の敵へと迫る神の鉄槌は。人類すらも脅かすほどの威力を以て、裁きを下す。
だが。
――この俺に背を向けるとは、余程死にたいようだな。あの鉄屑は決して、そんな無様は晒さなかったぞ――
天より振るわれた尾によって、死の裁きを受けながらも。その狂眼に宿る闘争の業火は、屈服を拒んでいた。
尾の一撃を全身で受け止め、その衝撃が地割れとなって広がる最中――怪獣はその体勢のまま、最期の熱線を撃ち放つ。
1年前の戦いを経て、かつて「火炎放射」だった放射能の業火を、さらに凝縮された「熱線」の域にまで収束させ、練り上げた進化の結晶。その渾身の奔流が、今――尾を振り下ろし、無防備となった神獣の背に、直撃する。
天を衝き、東京の外にまで轟くほどの断末魔。その雄叫びは衝撃波となり、周囲のビルが発泡スチロールのように弾け飛んでいた。
内側からすでに破壊されていた神獣にはもう、その一閃を耐え凌ぐ余力は失われており――全身の亀裂が広がって行く中、熱線に貫かれて行く。
それが。ヒトの手によって生まれ出でた紛い物の、限界だったのか。
かつて神獣と呼ばれていた方舟の化身、だったものは。蝋のように溶け、熱線を浴びた箇所を中心に、消え去って行く。生みの親と同じく、この大地の下へと還るように。
『……やった、のか』
「……」
微かに生きている通信の向こうから、沖局長の掠れた声が聞こえて来る。だが、神獣を斃した先に残された怪獣の「異変」を前に、兜疾は何も言えずにいた。
苦悶の声を上げる怪獣の全身は、赤く発光し――亀裂だらけとなった身体の節々から、蒸気を発している。
神獣の尾による一撃は、怪獣の体内に渦巻く熱線放射機能さえも大きく狂わせていたのだ。それこそ、己の命と引き換えに、過去最大の一閃を撃たせてしまうほどに。
「ヴォゴラッ……!」
無意識のうちに。兜疾は、手を伸ばすが。
それが届くはずもなく――横たわる怪獣もまた、天を仰いだまま、体内の熱に焼かれて行く。彼の破壊者は人類が手を下すまでもなく、己の炎により朽ち果てようとしていた。
「……!」
ふと、その時。力尽きた怪獣の首が倒れ、機獣の方へと向けられる。それは、機獣の眼となっている兜疾と視線を交わしている、かのようだった。
――最後まで、俺の勝ちだったな――
怪獣に理性などない。闘争本能しか持たない、破壊者に過ぎない。
頭ではそうと理解していながらも――僅か一瞬、吊り上がった口元を目にした兜疾には。怪獣が、そう嗤っているように見えていた。
「……貴様は必ず、この、俺が」
倒す。はず、だったのに。
その一言さえ、口にする資格を失ったのだと、兜疾は独り打ちひしがれる。神獣に負け、牙をもがれ、あの怪獣と決着を付ける機会を失った今――彼にはもはや、その最期を看取ることしか出来ない。
骨も残らぬほどに、街と共に燃え尽きて行く彼の者を、見届けることしか。
『……やったな、龍崎』
「……」
その胸中を、知ってか知らずか。核攻撃のカウントダウンが、残り5分というところで停止したことに歓声を上げる巨獣対の職員達を背に、沖局長が労いの声を掛けたのだが。
兜疾は何も答えず、最後まで険しい表情のまま――
◇
――1年前の「怪獣事件」で得た経験もあり、「神獣事件」により傷付いた目黒区の復興は迅速であった。半年が過ぎる頃には都市機能の6割が回復に向かい、避難生活を余儀なくされていた都民も、自分達の家へと帰り始めている。
復興作業においては巨獣対の活躍も目覚ましく、大破した機獣を解体して生み出された「重機」の数々が、現場で重宝されるようになっていた。
その作業の推移を、巨獣対局長の沖尭之は今日も見守っている。彼の傍らに控えている巨獣対の職員達も、「兵器」から生まれ変わった機獣の姿を、感慨深げに見上げていた。
最近では、咲倉恋の復興ライブを生で見たいがために、ボランティアへと応募する若者達が増えていることもあり――新たな「機獣」と共に復興に従事する人々の数も、日増しに高まっているのだという。
「しかし、不思議なものですねぇ。あの機獣が今や、復興現場で活躍する重機とは」
「先の戦いで政府から、機獣の有効性が疑われてしまったからな。どのみち修理するには致命的に予算が足りなかったんだ、こういう用途でしか
「龍崎大尉が見たら何て言うか……」
「……悪くは言わんさ。
――結果として怪獣と神獣は死滅し、核攻撃の理由が失われたことで東京は救われた。だが、機獣が破壊されたことでカウントダウンが目前に迫っていたことは事実であり、巨獣対は政府からその責任を問われることになったのである。
そうして龍崎兜疾大尉は除隊処分となり、残った巨獣対は復興作業への従事を命じられることになったのだ。多くの犠牲者を出し、目黒区を壊滅に追いやったことへの「禊」として。
「……龍崎大尉、今はどこで何をしてるんでしょうね。機獣が東京を救えていれば、今も彼は……」
「さぁな、自分の人生でも探してるんじゃないか。……それにマスコミは悪し様に言ってるようだが、機獣はちゃんと東京を救ってるぞ」
「え……そうなんですか?」
だが、巨獣対の奮戦を「失態」として世間が報じる中。沖局長は部下達の前で、口元を緩めていた。
「あの後、
「それって……」
「機獣が神獣と戦って稼いだ時間は97分。……龍崎にしか出来ない仕事だったのさ、核攻撃から東京を救うってのはな」
「……けど、龍崎大尉はもう……」
「その方がいい。……あいつが帰って来る時は、再び怪獣が現れた時だからな」
そんな彼と、巨獣対の面々は。生まれ変わった機獣の手で、生まれ変わって行く街並みを眺めながら――「次」が来ないことを祈り続けていた。
どうかあの怪獣が、最後の1体であるように――。
終
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