第13話 少年は冒険者ギルドに向かう

「お疲れ様。どうやらそっちも片付いたみたいだな」


 ヒロは心中ではその異能力や膨大な魔力に関して未だに疑問に感じながらもヒカリに労いの言葉を言う。

 ヒカリが疲れてそうには全く見えないがあれだけ派手に暴れたんだ。一応そう言っておくべきだろう。


「ヒロもお疲れさま。よく死ななかったね」


 ヒカリもヒロにブラックジョークと一緒に労いの言葉を返す。

 ヒロはその事に少し安心しながら、苦笑いの表情を浮かべて会話を続ける。


「たりめーだろ、誰がこの程度のことで死ぬか」

「案外やり手なんだね」

「そっちこそ十二分に強いじゃないか」

「そっちは思ったよりも弱いみたいだね」

「思ったよりとは心外だな。俺は正真正銘の弱者だと言わなかったか?」

「ハァー、聞いてないよそんなこと。ていうかそこで威張らないでよ」


 ヒカリは苦笑いしながら、それでいて呆れたように言う。

 対するヒロはムッとしながら言葉を紡ぐ。


「ホント失礼なやつだな、俺にとって他者より劣っているということは、弱者であることは俺自身の存在証明であり矜恃プライドだ。誰にも文句は言わせない」

「いや、それを誇りに思う必要は──」

「誰にも文句は言わせない」

「けど──」

「誰にも文句h──」

「あーうん分かった」

「………」

「………」


 数秒ほど沈黙が続いた後ヒカリが「ハァ〜……」諦めたようにとため息を吐いた。手の平を上に向けたまま肩の高さまで上げ『やれやれ』と言いたげな顔で首を横に振るジェスチャー付きで。


「ハァ〜、なんだよため息なんか吐いたりして。幸せが逃げんぞ」

「ヒロに言われたくないよ」

「うっせぇ。それよりもさっさと行くぞ」

「……ん?行くってどこに?」

「……………お前マジで言ってんの?」

「……?」

「ダメだこりゃ」


 ヒカリがホントに分からなさそうな顔でキョトンと首を傾げるのを見ていたヒロは項垂れる。

 まさかここまでとはとは思っていなかった。


 ヒロは「ハァァ……」と大きめなため息を吐いたから行き先を告げる。


「依頼達成の報告をしに冒険者ギルドに行かないといけないだろ。てか、それ抜きにしても魔物の死体だらけの場所から離れたいだろ」

「あ、そっか。なるほどなるほど〜確かにね〜」

「だろ?分かったら早く──ってもう既にいねぇ!?」

「早く行こうよー!」


 声のする方を向くとヒカリは十メートルほど離れた場所にいつの間にかいた。恐るべき行動力と移動速度だ。全く気がつかなかった。

 だが「全く仕方ないなぁ〜」と言いたげな顔をヒカリはしており、とてもムカついたので、男女平等の理念に基づきとりあえずシバこうとヒロは思ったが、ヒカリの実力的に返り討ちにされるか性癖的に喜ばれそうなので諦めた。

 ヒロは痛めつけられて喜ぶような変態マゾでも、痛めつけられて喜ぶような相手を見て自分も興奮するような変態サドでもないのだ!


 ヒロはもう一度ため息を吐いてからヒカリと共に冒険者ギルドに向かった。

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ideal story MHR @31lord

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