禱れや謡え、花守よ
やがて。
『
深山
その、死体が携えた一本の日本刀を。
『う、む。……良し」
きゅ、と瓶に栓をするような動きで、深山名護の頭部が胴体と再接合される。
首を
現に、声は。
「名護が言っていたろう?
「やはり貴方か――刀霊〈
深山名護のものでは、なくなっていた。
「そんな、嘘……」
「刀霊が、花守の躰を……!?」
操り、動かしてでもいるというのか。
「そこな
深山守護刀霊、神刀〈生駒〉。元〈夕京五家〉筆頭・深山家と共に戦乱を駆け抜け、この
深山名護をこうして殺せばそれが最後の『鍵』となり、活性化した霊脈を通り、今度こそ
嬉々とした声。凛としたその音色。
この刀霊は、何を。どうしてそこまで憎んでいるのか。
幽世に
――足首を掴む
「ふん。〈
神人合一の気。希代の名刀の神気と
「
屋内に突如発生した竜巻が
その発露を
「
目の前の、契約者の躰を操る刀霊は、とうに狂っている。この大霊災を引き起こしておいてのこの言葉。
「世のため人のためと言えば凡ての義になると? 笑わせるなよ。朝日を拝むために
「お前らの都合で折られ
扉の隙間。夜の広がる窓。明かりの届かない凡ての場所に、『死』が
――
この刀に、過去なにがあったのかは解らない。口ぶりから察するに、近しい刀が使い潰され、折れでもしたのだろう。
だが。
「……〈生駒〉殿。それでは道理が通りませぬよ」
濃密なる瘴気。留まるだけで死に繋がるこの場所で。いっそ涼やかに朝霞神鷹は応える。
〈凪風〉の刀身に、僅かな――けれど確かな霊気が
それが、神の――力あるモノの尺度故だとしても。神域に達したと言われる、人間の神鷹からしてみたら。次いで出した言葉は、多分に椿の影響を受けているなあ、などと笑みすら浮かべて。
「たかだか刀一本の復讐に、この世凡ての命を
「なに」
花守として生きてきた。だから霊魔――怪異、怪談の話は噂好きの街人よりも
たとえば強い霊力を持った者が、自分の生きる領域で迫害され、呪いへと転じた話。
その手の話は
自身を
まったく関係のない命さえ呪う対象にするというのは、そう。こちら側からしてみればとても割に合わない。
その
「まるで、旦那に逃げられた腹いせに世の全てを呪い殺すなどと言い出した
びきり、と
「あ、朝霞様……?」
だいいちそれを言うのなら、だ。
「――
「――今にも死にそうな体で良く吠えたな、朝霞神鷹。
「もとよりそのつもりで来た。霊魔〈生駒〉を此処で討ち滅ぼし、
「その抗いは赦す。存分にやってみよ。さぁ――」
――果たして、ここに現世を賭けた戦いの幕が上がる。
「さぁ、
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