最終話【はるをまつ。】
第二次丸奈奪還戦/弐
休穏決起
「はい。作戦は三日後に。……いえ、痛み入ります。それでは失礼致します、首相」
ぶつり、と向こうからの交信が断たれるのを確認して、壁掛けの機械から伸びた筒を戻す。ややあって、花守隊作戦参謀・
激務と言えばそう。何しろこの国の未来が懸かっている。それでもどうしてか、こうなる以前の内政に勤しむよりは、花守風に言うのなら『穢れにくい』とも思った。
司令室で前線を知らぬ高官たちの見当違いな会議に比べれば、
最も効果的な作戦を。最も効率良く。できるだけ早く。
花守ではない彼に求められたのは、そこにヒトがましい感情を入れないこと。どれだけあっても押し殺せ。
/
「……つまり」
「電撃戦です。
「まァ、三日だな。その間に回復できなかった連中は
「ここに来て選別か……致し方ありませんね」
「ええ。
「では本部の指揮はこれまで通り、
そうして作戦は決まった。
「……本当に、これでよろしいのですね?
「いい。こっちは任せろ。そっちは任せる」
/
「…………コウスケ。君には
「あ」
共に明けない日を願った者同士。その意味ではふたりは同じ方向を向いている。けれど。
「でも深山様は『深山で待つ』とも
……あやうい。その、理外の理性の先。この〈魔人〉を、この侭にしておいて良いのか、という危惧が〈生駒〉には
「ふう。じゃあ、そんな君に朗報だ。彼らも今度は
「朗報の意味を解ってらっしゃいますか?」
花守が深山に来るのであれば、誰よりも花守を――生きた人間を求める梶井にとっては深山こそが、その
「いいや、今度こそ必ず来る。君が真に求める者が」
その名を聞いて、彼の瞳は
/
電撃戦を行う、という作戦概要よりも。続いた言葉の方がよっぽど電撃めいていた。
「っつーわけで、古谷には百鬼だけで挑む。あそこには霊脈が無ェからな」
されど無尽蔵。深山攻めを行うにあたり、古谷に
「ンで、今をもって深山
「え……あ、」
「そんな……!」
どちらも地獄行には変わりない。けれど古谷と深山、どちらに戦力を割くべきか。迫間の奪還を
そして。
「深山組の総大将は――任せるぜ。しっかりやれよ、夕京五家」
椿の後ろから姿を現した、その青年。
「あぁ……解かってるよ、椿」
――
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