蛍。
――瞬間、世界は
刃を突き刺した水面。刀霊〈
「っ、はぁ……」
〈雪〉の
あぁ、余計な思考が入っている。一ツ終わらせただけだ。まだする事は残っている。
深呼吸を二回。
特段、
それでも『場』は変わった。生きた
(
「……ぁン?」
刀霊の声に顔を上げると、
吹き込む風を
この迫間に
不意に、脳裏を過ぎ去る幼き日の夏の思い出。
それを、
「……
まだ浸るには早い、と見切りを付けて池から出た。
すれ違い、けれど触れられはしない
果たして、息を呑んでその光景に目を奪われていた百鬼
までに、距離にして五歩分程の時間を要した。
出口に、陽の光が差している。つまりはきちんと、換わったのだろう。
その正しさは、外に出て思わず目を細めてしまう程に
「これは、そんな」
「椿様……」
「ま、本来ならこうってだけだ。全部終わったらまた、直せばいい」
――この世ならざるモノで補われていたその街並みは、きちんと正しく、それを取り除かれて、広大な廃墟と化していた。
「とりあえず
その脚で百鬼本邸へと向かう椿。
……
/
「おかえりなさいませ、椿様」
「
「はは……
出迎えは実家の門前。現世を取り戻したというのに張り詰めた気の一門と、その筆頭。……これは刀傷、
(つばき……痛い。)
もう一本の刀霊〈
「――――」
「手の空いている者で居間は使えるようにしておきました。まったく、あのような手合いは椿様に任せたいものです」
洞にあった大妖の死体。梓の負傷。神気の
「
肩の荷がやっと一ツ降りた、と息を吐くのが
「あッずさ……!」
気ィ抜くな、という椿の声は一瞬遅く、喉から出ることは無かった。
ずるり、と。百鬼
「……あー」
あの瞬間に
「……お気をつけを、椿、さま」
「
「んぐ。いいえ、いいえ」
首。首はある。
「幽世で、生きておりました。鞘は無く、右手から直接刃が。アレは、アレこそが」
霞む視界に、椿の
「――お互いに、お目当てなのでしょう」
やっぱり
その思考が、梓の最期だった。杞憂であることも知っていた。
何故ならその名前は、主の刀霊〈薄氷〉が……
(――
折れた太刀のもう半分が、よく知っているのだから。
(、
/
迫間突入部隊、百鬼家より損害一。他部隊より損害数名。
追記。
百鬼前市岡梓の浄化儀礼は不要との事。
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