蝶と迷い家
/
その展開は、関わった誰もの予想を裏切った。
/
――
『
「――――」
神棚に向かい、座して
「……何かな、〈
『なに、
かの地の霊脈を奪還されては我らが悲願に差し支えるぞ、と刀霊〈生駒〉は続けた。
「彼らに『深山で待つ』と言ってしまったからね。約束を
置いた駒は
「〈生駒〉は少し、彼を見誤っていると思うよ。夕京で勝負になるのは百鬼
『……ではお前ならば? 深山名護。我が契約者よ』
「勝負になんてならないさ。共に世界を変える、大切な同盟者だもの」
/
「……これは」
百鬼椿、百鬼
「一体、」
封印は解かれ、其処は確かに〈幽世〉と繋がっていた。
「どういうことだ――?」
入り口から点々と続いていた血の
――予期していた障害が無い。それは椿にして、思考に空白を生む程の衝撃であった。
即座に
他の花守の誰かが先んじて霊脈に入った? 答えは否。明白に否。迫間家が途絶えた以上、百鬼家以外で此処を知る者が居る
深山名護たちがこの場所に何もしていない、というのも考えられない。此方が迫間を奪取できれば五ツの大霊脈の内、残るは深山だけとなる。迫間を
他に何か在るとすれば自分が連れている少女……深山杏李の存在。深山家として何かしらの鍵になる可能性があるか。だが
視線を少女――杏李に流す、と。
彼女はいっそ
ぽたり、ぽたりと。
彼岸花のように行儀良く
首無しの霊魔の死体は、やがてそう在るのが道理のように、瘴気を発散させながら消えていった。それに
――理解する。
障害は無かったのではない。在ったが取り除かれた。誰がやったのかは不明。
そしてそれを
だから。
この場所まで続いていた血の跡は。そうではなく。
此処から始めて、この祠を出て行った。
「椿様……!」
律の声に思考を
違和感。
いや、
この地を
「……あァ」
椿は
神気を
/(その瞬間の、少し前。)
慣れ親しんだ
――
なんてことはない
だからこその強烈な違和感。迫間区の大霊脈が反転し、〈
だからこそ当然だと安心する。此処は百鬼の本拠地だ。
――生垣は
武家の時代に於いては不吉の花。それより
代々の
……幽世に呑まれて
長の命に従い屋敷の周辺一帯に溢れた霊魔を討ち。たぶんそういう意味ではない『可能ならば整えておけ』という言葉の真意を考えるに、まあ屋敷を掃除して更に時間が余っていたら茶でも沸かそうか、などと予定を頭の中で組み上げたところで。
「椿様? 随分とお早いお戻りで」
この八年ですっかり慣れた刀霊の神気に、百鬼
果たして。
「あっ! あぁ! 花守様ですか?」
希望の花に誘われた蝶のように。
「良かった……! 生きてる方に
感激を隠そうともせずに笑う、よく知る神気を纏った、全く知らない
/(その後、世界は裏返る。)
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