、ナレド遠キ壱枚画
……
魂の
天才と称されながらも花守になれず、そして理解されなかったその
予想のしようもなかった『魚』の凶悪さに今、こうして倒れている訳だが。
『――朝霞神鷹にお気をつけください』
警戒の対象を内側に誘導させた。自然、下手人は
「…………。君は正しい選択をすると、思っていたんだけれどね――ねえ、斉一君?」
「……
「霊魔はお前の領分だろ」
そう、悔しそうな
深山名護が一歩退いた。軍刀の刺突を確かに見切り、同時にその鋭さに暗い廊下へと後退を余儀なくされながら。
「斉一君。私と〈生駒〉なら君の望みを叶えられる。嫌いなんだろう? 君を認めなかった〈夕京五家〉が。その才を認めないこの世界が」
「五月蠅いって、言ってるだろ――オマエに、オマエらに、オマエらみたいに」
この男は確かに世界を、他の花守を嫌っている。この
どうして自分がそこに立てなかったのか。〈
見下していた
「持ってる奴が、施し気分で気軽にボクを憐れむんじゃあないよ――!」
花守ではない囲斉一には霊魔を
その手にある軍刀は。神域に至った剣技の後塵を排し続けたその技は。名家の嫡男として備わったその才能は。他者を
この世に在る生き物なら殺せるのだ。だから椿は斉一を選んだ。例えば、生きながらにして
斉一の背後、杏李の手で霊魔が祓われた。まったく不快だ。神鷹が
――その性根の屈折は、
「…………ク」
百鬼椿は己の抱いた感傷に、
その強度。どうして堕ちないのか。
「……実際見ると引くなあ、落ち花、頑丈すぎるんじゃないの」
「良いとこ育ちの囲われとは違うンでな。……さて」
深山杏李。囲斉一。百鬼椿。現状揃え得る最高の戦力が深山名護を見る。
「……参ったな。多勢に無勢じゃないか。ところで――」
瘴気の排された
「私が、神鷹君の部屋に来るまで何もしなかったと思っているのかい?」
――無数の気配が、
(つばき。)
「あァ。……やってくれたな、深山名護」
次の作戦に向けて、戦える花守は
もう、瘴気渦巻く戦サ場で、これ以上は無理だと判断された者たちが、それ以上を浴びたらどうなるか――こうなる。
それは、いつか杏李が見た姿。
魂を剥離され、奪われた命を取り戻そうと
「上手くいくと思ったけれど、今回は諦めよう」
「待てッ」
杏李の制止の声など受ける義理は無い。名護は暗闇へと身を投じ、
『――深山にて待つ。
消えた姿に入れ替わり、血の気の失せた腕を伸ばして
(……
「あァ、
その紛れもない死地に、鞘ごと大刀を担いだ椿が飛び込む。
「斉一」
逆手に抜いた脇差〈
「神鷹を頼む」
手の中で
「ボクに指図するな。……解かったよ」
それを平然と行う幼馴染の姿に何を思ったのか。斉一は
「ほんとう、貸しだからな朝霞」
「……すまない、斉一」
下がり、神鷹の傍に控える斉一。
「謝るなよバカ。……クソッ」
そんな二人を、杏李は心の置き場所が見いだせずに眺めていた。
「ボサっとしてねェで仕事しろ深山ァ!」
「は、はいっ!」
椿の
部屋を振り返る。
どうしてか、その光景が……今日まで見ることがなかった、はじめての筈の
再び見ることは適わないとでも言うように、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます