水面に薄らふ赤月遠く(前)
代々
時は文化の
当代の『椿』は
(
その椿の契約
「ン?」
(瘴気が濃くなっている場所が在る。)
「…………」
椿は視線を横に流して考える。促すようにもう一度「当世」とかけられた声に、
「……雪の索敵は大刀だけあって大味だからな。信憑性の有無をちと、考えていた」
(…………。)
今度は雪が押し黙る。
「まあ。大事なければそれで良し。貧乏
(……そこの路地裏だ。霊魔の気配は――ちと曖昧に思う。)
「はッ。本当大味な、雪は」
言葉はそうであっても迷うことなく足を向け、賑わう
建ち並ぶ屋号の旗とは違い、見せることで不利を
慶永元年、十一月のとある日のこと。これより五年後、日ノ国は
だがそれは、
帝都
ゆえに――
「……なンだ、霊魔の一匹も居やぁし
いよいよもってこの刀霊の索敵能力は当てにならん、と
(けれども当世、これはこれで面白くはないか?)
フン、と鼻を鳴らして瘴気の
「まぁ、な」
文明開化と同時に武士の役目は終わりを告げ、その魂と同義であった刀も廃刀令により多くが喪われ、現存するのは工芸・神事の価値ありと判断され、保存された
天皇家勅命により霊脈を保ち、時折彼岸を渡り
その世の情勢をして、だからこそそれはふたりの興味を惹いた。
(どうする? 当世。)
「……鉈の方が
(……旧いな。我より後期だが江戸よりも永い。だが辛うじて、辛うじて
「決まりだな。
(お
拾い上げ辺りを見回しても、この刀が身を寄せた鞘はどこにも見当たらず。
では
再び戻った大通りは、
路地裏から現われた花守の蘭服が少々茶汚れていようとも、気に留める者など居はしなかった。
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