功勲在らねど首は存野―禱れや謡え花守よ・異聞―
冬春夏秋(とはるなつき)
第壱話〈迫間ノ退キ口〉
魔を狩る鬼
なんとも地獄のような有様になってしまった帝都主街区の一つではあるが、その喩えは大筋において合っているが厳密に言うのなら名前が違う。
――死後に行き着く果ての一つで極楽ではないと言うのなら、まさに絵図は地獄のそれで。
けれどもこうなった発端。『向こう』の世界は〈
「
呼ばれた青年――椿は秋橋から視線を切り、声の主へと振り返る。
「ご苦労。して、状況は?」
「は。……陥落いたしました。
迫間は区の名前になっている通り、帝都守護の柱〈夕京五家〉の一つだ。それが堕ちたとなれば……
椿は
「
「八雲殿はどうすると?」
「お残りになられる、と」
「……はッ。だろうな」
「椿様、どうなされますか」
――空気が淀んでいる。カンカン照りのお天道様など、最後に拝んだのはいつだったか。
「決まっている。
それを証明するかのように、無惨な河川敷に黒い
コ、と
「戻り、八雲殿に伝えよ。
――跳んだ。裾の長い
「
鯉口を切る。
(いつでも。)
抜刀。着地。舞い上がる砂塵と外套の裾。孤を描いた銀閃は
たちどころに吼え上がる
瞬く間にも取り囲まれ、かつて絢爛の千本桜の河川敷を霊魔の影が埋め尽くす。
「
(応。)
椿は右逆手に脇差〈薄氷〉を握ったまま、左手でもう一振り――大刀を抜き放った。
「……六文は不要だ、仲良く並べ」
慶永の世は堕ちた。
これは、それに抗う者の
【
「――彼岸を飾る、
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