孤児の少女は諦めなかった。
前向きなだけじゃない主人公。色々と抱える中、それでも絵を描くために前を向くことを諦めない。
諦めなければ全て上手くいくとは限らないのが世の常ですが、それで本当に諦めるか、諦めないか。
巨大な壁の前で諦めない選択肢を取ることができる人は何人いるでしょうか。
諦めたくない夢だったとしても「現実」とやらを見て諦めて行った人達が何人いたでしょうか。
無謀な夢は諦めるべき、そんな世の中に、この作品は希望を見せてくれる気がしました。
そして感情の描写が本当に上手い。
その感情の描写がキャラクター達に息を吹き込んで、それぞれがとても人間味を感じる。
だからこそ、感情移入がしやすくまるで自分自身が無謀な夢に立ち向かうことが出来たような追体験が出来るのがこの作品の魅力だと感じます。
テーマと作者様の上手い描写が見事に噛み合った作品だと思いました。
絵描きを目指す女子高生が夢半ばで異世界へ転生する。そこは七色の女神と黒の神が崇められるファンタジーの世界。孤児の幼女ノアールとして孤児院に入った彼女は絵描きを目指して人生をやり直す。
しかし、食べる物にも困る貧しい孤児院には絵を描くための画用紙も筆も絵の具もない。
美大への進学や平穏な生活も今までのすべてを失い、底辺階級の孤児にまで落ちてしまったけれど、絵を描きたいという願いだけは失われない。
何もないゼロの状態からお金を稼いで高価な画材を手に入れ、周囲に絵を描くことを認めてもらうために奔走する。
さまざまな苦難や試練を乗り越えながら自分の夢を追いかけるノアールの姿が心を揺さぶります。
孤児院の義父母のフリントとネリ、院仲間の少年トープ、心優しいゴブリンのガガエ、たくさんの人と出会い、別れ、ときには喧嘩し、助けられながら好きな絵を描いていく。
果たしてノワールは異世界で絵描きになれるのか。そしてどんな名画を描きあげるのか。成長を見守りたい。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)