第7話 なんだか知らないけど寝たよ
くしゃみによっておれの唾液がまんべんなく降りかかった、ハンバーグ定食が四人のサラリーマンの前に、置かれた。四人のサラリーマンの半分飛び出した眼球がハンバーグの唾液の位置を確認してから、おれの顔に自分の眼球を飛ばしてくるように、おれを見つめた。いくらおれがとろいからと言って、この状況が理解できないことはないのだ。おれは、口を目一杯開くと、その眼球の一つ一つにおれの口の中をみつめさせた。おれは、ニヤリと笑った。
「だいじょうぶ。だいじょうぶ。だいじょうぶ。おれの口のなかにおれの唾液が沢山入っているでしょ。でもおれは元気はつらつ。健康そのもの。何の問題もなし。さあ食べて、食べて、食べて。美味しいハンバーグ定食を食べてちょうだい」
おれは、この気まずいを雰囲気を打開すべく、思い切り笑顔を作り、高らかに笑った。すると、立っているおれの横に座っていたサラリーマンが、ハンバーグを右手ムギュと掴むとおれの顔に投げるように擦りつけた。その暴挙に合わせた、他の3人のサラリーマンもおれの顔にハンバーグを投げつけたのだった。
その様子をレジの横に立ってポカーンと見ていた、店長が飛んできて、土下座をして、
「まことに、申し訳ありまでんでした」と叫ぶように言うと、おれにむかって、
「馬鹿野郎、おまえもあやまれ」と、小声で言った。
おれは、慌てて何が何だかわからないまま、顔中ハンバーグしたたらせながら、土下座をして店長と同じように、
「まことに、申し訳ありませんでした」と、大声を出した。
他のテーブルにいた客が一斉に立ち上がり、スマホを出し、この様子を撮影しはじめた。4人のサラリーマンの一人が、
「やばい炎上するぞ」と叫んだ。
すると、その四人のサラリーマンもイスをどけて、土下座をしたのだった。
すると、すると、今度は食堂の外にいる通行人が食堂の大きな窓越しに、スマホを出し、店の客全員を撮り始めた。そうすると、なんと、店の客全員が土下座をしはじめたのだった。おれは、何が何だかわからないまま、土下座をしながら、眠くなり寝てしまった。
17回目の首 里岐 史紋 @yona
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