第6話 やらかしたこと

昼の12時30分頃、店は満杯で、おれは見事にウエイターの仕事をこなしていた。すると、四人の掛けの席が空き、そこに四人のサラリーマンが座った。

この店のメニューは4種類だけで、Aセットはハンバーグ定食、Bセットは生姜焼き定食、Cセットはお芋定食、Dセットは葉っぱ定食で圧倒的にAセットかBセットの注文が多い。この四人のサラリーマンも全員Aセットを注文した。おれはすっかり慣れてしまって、両手で、2セットずつのったお盆を運んだ。無事に目標とするとテーブルにたどり着く。すると、なんたることか。クシャミが連続して4発でたのだ。おれのクシャミは強烈で、唾液が四つのAセットに満遍なく撒き散らかされたのは、店の隅々からでも観測された。おれのクシャミは、どうも心臓を動かしている自律神経系で、自分の意志や感情では抑止できないのだ。しかも、突然やってくる屁と同じ厄介なものだ。しかし、料理運びはすっかり上達していた。そのようなクシャミのアクシデントにもめげず、料理の4セットのお盆は、しっかりとおれの手から落ちることなく手の上に収まっていたのである。おれは悠然と何事も無かったように、盆をそろりとテーブルに置き、料理をそれぞれのサラリーマンの前に並べた。

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