LOOP THE LOOP!!! - ③

★2LOOP目!?



どうやら時が戻ったらしい。


いや俺も信じられなかったさ。

死ぬほど慌てたし、パニックだったし、混乱した。

意味がわからなかった。


でも学校内で散々検証した。どうやら本当のことのようだ。


まずテストが終わった時点に戻った。

そしてまるで録画したテレビをみているかのような、そんなシーンが続いた。


原因はわからない。

でもキッカケは。普段との相違点は。

――アレしかないよな。

引き寄せられた胸元の感触が未だに残っている。


とにかくそれをどうにかしてみるしかない。

それには――。



「――いつまでもこのままじゃ、だめだよ?」

二度目の芹沢の言葉。


今度はなんとか余計なお世話だと言ってやった。


「愛ちゃん、なんだって?」

「将来の夢は占い師だってさ。それも未来が視えちゃう系の」










☆さっきとは違う場面転換

学校を出る。

小葉瑠と別れ、家に戻ると後藤に電話を掛けた。


数コールが過ぎ、もう出ないんじゃないかと思われかけたそのとき。

「はい、後藤です」

「なんでお前来なかったんだ」

「はあ? なんのこと?」

「まあいい。絶対遅刻するなよ、絶対だぞ」

何かのフリ? と後藤は笑いながら電話を切った。


よし、これで後藤が来る。


二人きりにはならない。

キスもしない。


これで――いいはずだ。


……いいんだよな?











☆どこかで見た場面転換

その後バス停に再集合し――


時刻は午後二時五十三分。


後藤は来なかった。


思い通りにならないことにちょっと焦る。

もしかしたら運命とやらが決まっていて、未来は変えられないんじゃないか。そういう不安。


そこまで考えて、いや、やるべきことをしようと思いなおす。

となれば俺がとれる選択肢は。


「……帰ろう。こんなんじゃ熱中症になっちまう」

「ええ、帰るの? ごっちはちょっと遅れちゃっただけじゃない?」


帰ればキスされない。そうすれば時間も戻らない。たぶん。自信はないけれど。


「さっき電話で念押ししたのに来ないのはおかしいだろう」

「念押し? なんで?」

「二回目だからだ」

「二回目? 何が?」

「なんでもない」

「……変なの」

大きなまるっこい瞳がゆがむ。

暑さでおかしくなっちゃった? と加えた。


ああ、それだったらどんなに良かったことか。


小葉瑠は当然この状況が二回目であることを知らない。

例えば突然強行突破で帰ったら――どんな風に思うのだろう?

喧嘩になるだろうか。

嫌われるのだろうか。


「ねえ、もうちょっと待ってみようよ。……そうだ、友くん、なにか面白い話でもしてよ!」

どくん、と心臓が跳ねた。


きた。

さっきと同じ流れだ。


しかし待てよ、と俺は思った。

もしかするとここで違う話をすれば展開も変わるのではないか?

そうすれば――アレは起きないのではないか?


……やってみる価値はある。

当然確証はない。

だが、俺はひとつ考えるとこんな話をする。

さっきと違う話。


「そうだな――じゃあ鏡はなぜ左右反転するのに上下反転しないと思う?」











☆オチが読める場面転換

「――というわけだ」

「なるほどね……。主観と客観、絶対的と相対的……言葉と定義」


時計の針は二時五十九分。


一回目と異なる話題。どうなる?


ふと小葉瑠の顔をみるとそこには、どこかで見た表情があった。


あ、と声が出そうになった。

これは、まずい。


「なあ、小葉瑠――」

「ねえ、友は私のこと、どう思っているの?」

しまった、と思った。


「私たちの関係ってなにかな? 言葉ではどう定義できる?」


――とどのつまり話の中身なんてどうでもいいのだ。

小葉瑠は俺の話を受けて、関係性に結び付けてしまうのだろう。俺たちの曖昧で、朧気で、ぼんやりとした、その関係性に。


いつも三人でいたから。それは言い訳だ。

いまは二人きり。

邪魔するものはなにもない。

小葉瑠は覚悟を決めたのだ。

それがいま――今日の午後三時だっただけだ。


小葉瑠は覚悟を決めた。

だからこうなった。

俺は――どうなんだ?


「それは――」

俺は必至に考えた。どうすればいい?

なにが正解だ。

今までは友達だった。

これからはどうなる?

いや、そういうことじゃない。



――俺は小葉瑠を、隣に座るひとりの女の子のことを、どう思っているんだ?



俺は考えることから逃げてきた。

あえて深く考えてこなかった。

それは、怖いから。

変化が怖いから。

関係性が変わるのが、ただ怖いから。

小葉瑠もきっとそれは同じだった。いままでは。


「答えられない?」

「そんなこと――」

ない、と言おうとした。言えなかった。



小葉瑠は俺の胸元を掴むとキスをする。

再び、意識が暗転した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る