要点をきちんと抑えていて、するするっと読めます。
作者の冷門さんが、チャンドラーの持ってる空気感を何かしらの形で受け継いでいるのは、読んでてわかります。
プロレタリア文学のことなど、きちんと学んだ上で書かれているのは、伝わってきて、それは志しのあることだと思います。
ただもうちょっと重厚感というか、描写の厚みみたいなものが欲しい気もします。
黒い本の作者は、獄死したということなので、そこには生爪を剥がされるとか、そういうレベルを超えた拷問があったはずで、そういう凄惨さが伝わるようなものが垣間見えるといいかなという気がします。
タイトルの、「災厄」と「黒い本」という単語のチョイスが好きです。災厄という言葉は、個人に降りかかる不運を超えたものという印象があるので、黒い本の、もっと手に負えない人智を超えたヤバさみたいなものが出ると個人的には嬉しいです。僕は、ファンタジー系が好きなので、ヤバいマジックアイテムみたいなものに心惹かれるんです。これは、完全に僕の好みですが。
黒い本の所持者に、まるっきり現実的に嫌がらせみたいなことを行なってる連中がいるのか、あるいは、不可思議な非現実的なことが起こってるのか。
結末がどんな風になるのか、楽しみにしてます。頑張ってください。