本作は、超常の能力を持ってしまった「能力者(アビリティ・ホルダー)」をめぐって、諜報組織が暗躍する世界の物語です。
主人公の甲斐くんは、物理的・電磁的遮蔽を透過して人間を「色」で認識できる異能の観測者。
相棒の折賀は、認識した人間へ総体的・局所的に念動力を作用できる制圧狙撃手。
二人はアメリカ中央情報局の指揮の下、異能者を拉致・テロリストへ斡旋する非合法組織アルサシオンから、不幸にも異能に目覚めてしまった人々を守るべく、世界中を駆け回ります。
緻密に描写された世界各国の情勢、過去の痛みと未来への渇望を秘めた登場人物たち、異能の発症と組織の因縁がからみ合い、収束していく最終決戦は圧巻です。
そして、そんな物語をさわやかにまとめ上げる一本の縦糸が、やはり主人公の甲斐くんの人柄です。
ちょっと似非ハーレムっぽく可愛がられたりもしますが、基本的にヒロインへ一途な純情を捧げる彼の姿は、時に微笑みを、時に涙と半笑いを誘います。
皆さんも彼と一緒に、アメリカの、ヨーロッパの、アフリカの、銃弾が飛び交う修羅場をジャージ一丁でキリキリ舞う気分を味わってみてはいかがでしょう!
遮蔽物を透過し人の心が色として見える、甲斐。 遮蔽物を通過し特定の人を狙い撃つ念動力を持つ、折賀。 この二人のコンビで物語は進んで行く。なぜか二人の服装はいつもジャージ姿。
能力者を保護する組織「オリヅル」。かたや、能力者を売買したり悪用する組織「アルサシオン」。お互いに能力者を巡るミッションで世界中を駆け巡り、時空を超えた並列世界でぶつかり合う物語。
能力者同士がぶつかり合う激しいアクション・バトルにはスリリング感が半端ないです。情景描写が秀逸な為、世界の国をミッションで渡り歩くさまは、まるで旅行者気分になってしまいます。更に彼らは時空まで超えてしまうとは……。
何よりも良いのが甲斐の一人称の語り口調。テンポがあって読みやすい。これによって、すんなりと胸に響くのかも知れません。
ユーモアたっぷりな伏線。コメディ要素タップリなのでニヤリと笑ってみたり、声が出る笑いも盛り沢山。時にはシリアスで胸にジーンと沁みるシーンもあるエンタメなヒユーマンドラマ。キャラクターも一癖も、二癖もあるユニークさが突起して、物語に華を添えています。青春・友情・恋愛・家族愛・能力者としての苦悩・そして諦めない希望。SF要素の中にアクション有り、ギャグ有り、数々のテーマがギッシリと凝縮されています。
猟犬コンビは、今日もどこかの世界を駆け巡っているのでしょうね。
大切な色を守る為に……。