第5話
『ムーア・リィクス』
住宅地からのびる丸斑点模様の白い坂道を上りきり、木々に囲われた森のような一帯のその奥へと分け入り、頬の汗を袖で拭った先に小さな公園があった。理不尽なことに、その場所はどこにもない場所のように思われた。ジャングルジムとシーソーの間に行列のできた売店があった。砂場のほうで金色のボールを投げ合っている子どもがいた。隅っこのほうでそれを見ている体育坐りの子どもがいた。他にもたくさんの子どもたちが遊んでいた。公園は訳もなく歓声に包まれていた。つかの間の休息のために僕はベンチの片方の端に腰掛けた。もう片方のベンチの端に旧友は座っていた。
「久しぶりだね」
旧友は僕にそう言った。
僕らは売店の行列の最後尾に加わってアイスクリームを注文した。僕は完成した小説を旧友に渡した。旧友は興味深そうに最後まで読んでくれた。夕暮れまで話をして真夜中頃に家に帰った。三十九度の熱が出ていた。
ムーア・リィクス 淀之直 @yodomi
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