宿命か運命か~い~
広々としたリビングには円卓があり、均等に並べられた椅子からは、持ち主の几帳面な性格が見て取れる。
「今日のような晴れた日には、ご覧の通り、月も綺麗に見えるし、静かにしていると、川のせせらぎや虫の音が聞こえてきたりと、凄く癒されるんです」
「こんなことを言ってますが、都心で暮らしていた
「もう。あなたったら」
微笑む
「さぁ。お召し上がり下さい。と、言っても、主にあらになりますかね。まーくんもいっぱい食べて下さいね」
円卓に並ぶ皿には、肉や野菜が綺麗に盛り付けられ、1人1人の前には肉を焼くためのプレートが置かれた。
「いただきます!」
それぞれが、手元に用意されたトングで肉を摘まみ、プレートの上で焼き始める。焼ける音が響き、匂いが部屋を包む。
「くー! これだよ。これ! ありがとう!
「いえいえ、あらにはこれからまだまだ働いて頂かなくてはいけないですから」
「まかせてよ!」
たくさん用意された肉が瞬く間に消えていく。肉をしっかりと焼いているのか、そう疑われるほどの早さで
「いやー! 美味しすぎたー!」
「あら……。ちゃんと焼きましたか?」
「まぁ、肉なら生でも大丈夫じゃないですかね?」
信じられない量の食べ物を一瞬で食べつくしたとは思えない、爽やかな笑顔で返す
「あら、やるな! 僕よりもたくさん食べるなんて、すごいや」まだ、口いっぱいにご飯を含みながらまーくんが話すと、「お行儀が悪いですよ」と、
「まーくんもいっぱい食べて、大きくなりなよ? 大きくなるには、よく噛んで、よく食べること、これに尽きるよ!」
「それにしても」お腹が満たされ、満足した様子の
「こんなところで、『これ』お目にかかれるなんて、
「あら、『それ』を知ってるんですか?」
「もちろんだよ」
「『これ』とか、『それ』とか、一体なんの話してんだ」
「『これ』だよ。『これ』」そう言って、
「『
「なんだその『
「じゅんさんが下品だよ。最低だね。てか、しらないの? ありえないよ」
眉をひそめる
「……ん。どこかで聞いた名前だな」
「今回の被害者の一人、『
「あー。なるほど、なるほど。そういうことか」納得の様子の純次に、
「ちなみにね。この会社は倒産したんだよ。一人息子を亡くしたことで、父である金剛社長の気が狂ったとかで、一時的に世間を騒がしたりしてたね」
「ほう。詳しいな」
「いや、なかなか有名な話ですよ。いい社会人なんだから、しっかりしてくださいね」
「まーくんにも言われちゃ、形無しだね」
「け。ほっとけ」――そうか。息子が殺されるってのは、気が狂うほどのことか。
純次は不貞腐れるように、席を立つと窓際へ向かった。窓から空に浮かぶ月が綺麗に見える。
純次は『柄にもない』そう思いつつも、昔亡くした友を思い出していた。
――安心しろ。あらは元気だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます