宿命か運命か~よ~

 春を迎えたといっても、夜ともなればまだ肌寒い。だが、少し前までの寒さに比べと幾分か良い。そんなこと思いながら純次は庭でタバコを吸っていた。


 「じゅんさん。タバコやめたら?」あらうは五感に優れていることから、純次のタバコが正直なところ苦手だった。


「あぁ。わりぃ、わりぃ。お前の姿が見えなかったから……、って、俺がタバコ吸ってんのわかってたなら、近づいてくんなよ」


 純次がタバコを吸っている時、基本的にはあらうは純次に近づくことは少なかった。煙が苦手というのはもちろんだが、純次がタバコを吸っているときには、何か考え事している時だったからだ。


「今日の公園に向かう途中だってそうだよ。急に吸い出すもんだから、何も言わなかったけど……、何か考え事してたみたいだったから止めなかっただけだからね」

「あ、あぁ。申し訳ねぇ……って、あら、お前! あの時のくしゃみわざとだろ! 俺にタバコ消させるために、鼻水飛ばしやがったな!」

「気付くのおそっ! じゅんさん、やっぱ探偵むいてないよ」


 周りからみれば、親子というより、兄弟のような二人。だが、純次はあらうが馬鹿笑いしている姿に親心なるものを感じていた。


「お食事の準備が整いましたよ」


 その声に純次とあらうが振り返ると弥勒みろくがリビングの掃き出し窓から顔を出していた。


 「はーい」二人でそう答え、庭を後にした。

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