桜の木に宿る悪魔~な~
「ところで……、
「……? あ! いつの間に来られていたんですか! 着いていたなら、普通に声をかけてください」
「この方はですね。私のじょう……」
「よい、
「ワタシの名は
愛嬌のある声に反して、人を小馬鹿にしたような芝居がかった口調。歩くたびに揺れる前髪により、時折見える目元は、漢字で表すと『
「可愛い女の子ですね。刑事ごっこかな? でも、ここは事件現場だから、近づいちゃだめだよ。お嬢ちゃん」
「あ、あら! だめです」
そう言って、
「人を見かけだけで判断しない方がいいぞ。お坊ちゃん」
仰向けに倒れた
「それで? 【対話】とは何だ」
「あらのちょっとした特殊な能力のことだ」
「純次か? なんだ、いたのか。久しいじゃないか」
「俺がいたことにはずっと気付いていただろうが、ほんっと昔っから変わらず、嫌な人だなぁ」
「嫌な人とはなんだ。ワタシに失礼だろ?それにしても、あらとは一体……? あぁ。こいつのことか?」
「俺の息子だ」
「お前の息子……。ん? お前、結婚してないだろ。どういうことだ」
「その話はまたにしてくれよ。
極めて、冷静な様子を装ったものの、純次の顔からは怒りが見て取れる。
「何年も前からワタシのことはまるちゃんと呼べと言っているだろう。いつになったら覚えられるんだ。その小さなおつむにはそんな情報も保持できんのか」と、茶化し「ふん。まぁいい。話を続けろ」とだけ言って、腕を組んだ。
――誰のせいだっつーの。
純次は危うく出そうになった声を、心の中にだけ収めた。これ以上、話をややこしくするのはご免だった。
「一般的な認識としては、人の感覚は五つあって、【視覚】【聴覚】【触覚】【味覚】【嗅覚】に分類される。だが、細かく分類することで、今では二十以上あることがわかっている。それらは人間の生物としての進化の過程でいい感じに調整されて、現代人の形となったわけだ。あらはこれらの感覚から、色々な情報を読み解き、視覚化することで、あらだけに見える潜在的な『何か』を読み解く事が出来るんだ」
「なにか……? わかるように、具体的に話せ」
「簡単な例を挙げると、泣いている赤ん坊が何で泣いているかを理解出来たり、有名な絵画を見た時の作者が何を表現したかったかなどの心情なんかだな」
「ほう。なるほど」
二人のやり取りを黙って見ていた
そのため、今日この日に
「まぁ、見た方が早いか……って、言っても、あらにしか見えない世界だから、俺たちは言葉を拾うことしか出来ないしなぁ」
「それでも、実際に見たほうが早いですよ。時間もないことですし、そろそろ始めてもらってもいいですか? あら」
そう言われ、純次の説明の間、
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