桜の木に宿る悪魔~い~
ポケットに震えを感じた
――このタイミング、きっとじゅんさんからだな。
「むー。そんなに心配しなくても大丈夫なのに……」
むすっとした顔で、純次からのメッセージを受け取った
「公園では何する予定?」
「えっと……あ、私は写真を撮るつもり。さ、桜の花が好きで、えへへ」
そう答えたひよりの顔は桃色に染まっている。
「へー。撮った写真見てみたいなぁ」
「い、いやいや。人様に見せられるような写真じゃないし」
「いいから、いいから。ちょっとだけ! お願い」
ひよりから差し出されたカメラを受け取り、収められた写真を一通り確認した
それから間も無くして、今更だけどさと、話を始めた。
「なんで、さっきの男がひよりのカメラを盗ったのかわかったよ」
首を傾げ、頭に『ハテナマーク』が無数に浮かべているひよりに
「本当は、さっきの男から聞こうと思ってたんだけど、意識飛ばしちゃって聞けなかったし、警察に連れていかれる間際も僕に敵意丸出しだったから、聞きそびれちゃったんだよね」
そう言って、無邪気に笑うと、ひよりにカメラの液晶を向けた。
そこに映っていたのは、有名な神社の桜並木の道沿いに、たくさんの人が溢れ、桜が舞っている様子だった。幻想的な瞬間が収められた写真からはひよりのセンスの高さが伺える。
ここだよと、
「え、あ! これ、もしかして……」
「そう。これを撮った事がひよりが狙われた原因だったんだよ」
写真には男が老夫婦の持つ鞄に手を差し込んでいる瞬間が映し出されていた。
「本当にただのとばっちりってやつだね」
「全然気づかなかった……」
真相が判明したひよりの様子からは怒りよりも、悲しみが先んじていた。
「まぁ、運が悪かったってこ……」
「違うの」
「ん?」
「このお爺さんとお婆さんはせっかく二人きりでデートを楽しんでいたのに、こんな事に巻き込まれてしまって……。今頃きっとお金がなくなった事に気付いて、台無しになってしまってるんじゃないかなって……」
――この子はさっき自分も同じ目にあったというのに、赤の他人にを気にかけるなんて……。ん?あれは……。
「やっぱり、大丈夫みたいだよ。あれを見て」
そう言った
「おばあちゃんのあの様子や男性の様子からすると、ドジなおじいちゃんが財布落としちゃったってな感じで受け止められてるんだろうね」
「う、うん。 そうみたいだね。本当のこと教えてあげた方が良いかな?」
それに対して、首を横に小さく振った
「それは警察に任せよう。今、この時は家族の幸せな時間を邪魔しちゃいけないと思う」
それもそうだねと、小さく頷いたひよりに、一つの小さな風が桜の花びらと共に訪れ、周りを流れる。その姿に
「家族っていいね。とても幸せそうで、羨ましくなっちゃう」
そう言ったひよりから目が離せずにいる
「ん?」
「いや、何でもないよ! あ、ほら! この公園だよね?」
気付くと目的地の公園の前に着いていた。
「改めて、先ほどはどうもありがとうございました。本当に助かりました」
「全然だよ。何かあれば、いつでも『依頼』してね」
そう言った
【何でも屋兼探偵事務所~ホントにどんな仕事も請け負います。どぶさらい、夕飯のお使い、犬の散歩なんなりと!出来れば、夕飯にもお誘いください。どうかご依頼お願いします~ TEL:03-xxxx-xxxx FAX:03-xxxx-xxxx】
「あ。書いてあることはそんなに気にしないで、最初は強気なコメント書いてたんだけど、あまりにもお客さんがいなくて、へりくだり始めたら、わけわかんないことになってて……あ! これ作ったのはじゅんさ……、父さんだから、僕のセンスじゃないよ」
慌てた様子の
――それにしても、さっきの風が吹いたときの桜の不自然な様子。
ひよりから見えた不気味な影は一体……。詮索するのは無粋か。
「さてと」
「やっぱり飲み物は炭酸に限るなー!」
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