桜の木に宿る悪魔~よ~
東京都千代田区に所在する平成初期に造られた西洋風な公園。計算された様々な樹木の配置は春になると園内の随所で桜の木が春を彩っている。
「はー! たまんねーなー! 仕事前だからビールってわけにゃいかねぇけど、やっぱ炭酸はいいなぁ」
純次は公園の入口にあった自販機で買った炭酸飲料を一気に飲み干し、園内の案内図に向かった。
「ひっろい公園だなぁ。これじゃあ現場がどこかわかったもんじゃねぇよ。はぁ……ん?」
案内図前で、現場の位置を把握出来ずにいた純次は、自身の携帯が鳴っていることに気付き、発信元も見ずに軽口で受けた。
「うーい。調子はどうだい」軽いノリの純次に対して、電話の向こうからは、呆れ声が聞こえる。
「ういじゃないですよ。何をしてるんですか?早く来てください。私があなたに電話してからどれだけ時間が経ってると思っているんですか」
声の主は今回の依頼人である
「悪いなぁ。ちょっと、問題がおきてよ。お、れ、は、公園に着いてんだがな」
「……と、いうことは、またあらの尻拭いが待ってるって事ですねぇ」
溜息混じりにこの先を予感し、後処理に追われる自分の姿に肩を落とした
だが、それは
――犯人の身だ。
以前よりは加減を覚えたものの、
この間も殺人容疑のかかった指名手配犯を見つけるや否や、蹴りの一撃で頭蓋骨割って、病院送りにしてしまうなど、
一つ溜息をつき、話を続けた。
「それよりですね。じゅん。あなたは今どこにいるんですか」
電話越しにでも口元が緩くなっている純次の姿が見えた
「んー。公園の東門の辺りだな」
「それなら、目の前に噴水が見えますね。その西側から奥に続く道を進むと池があります。その池の畔に咲く桜の木が今回の現場なので、さっさと来てください」
「はーい。せんせー」
悪ふざけをした純次に対して、
「あの野郎。相変わらず冗談が通じないねぇ」にやにやとした笑みを浮かべた純次は胸ポケットから出したタバコに火をつけた。
――それにしても、俺だけじゃなく
――と、なると俺を呼んだ理由は
考え事をしていた純次の耳にけたたましいサイレンの音が響く。
――この音はパトカーのサイレンか?現場が近いから……いいや、この音はあらを下ろした辺りだな。
「ったく、困ったお子様だ」
立ち止まり、
水を差すように、清掃員に禁煙だと叱られた純次は渋々ながらもタバコの火を消した後、再び現場へと歩を進めた。
それほどの距離は無かったものの、道中には桜の木が幾つも見受けられ、その様子に純次は疑問を覚えた。
――今までの事件もニュースやネットの記事程度の知識しかないからな。でも、なぜだ。これだけ公園内のあちこちに桜の木が植えられているというのに、現場となった桜の木に死体を遺棄したんだ。
昨日、殺人事件があったばかりの園内だが、入口付近には人は多かった。それも事件現場に近づくにつれ徐々に減り、規制線が張られている一角にたどり着く頃には人の気配はなくなった。
――ここか。
周りには警察関係の人間が数人いる程度で、数は少ない。一通りの現場検証が終わり、大半は引き上げた形だ。
「純次。こっちです」
規制線の奥から、聞こえる声に目をやると
黒いスーツを綺麗に着こなし、黒を基調としたメタリックな眼鏡にオールバックのその姿は、警察というより、執事に近い。
実際に犯罪者の間でも
「
「何をぶつぶつと独り言を言ってるんですか。おふざけはよして、こちらへ来てください」
扱いに慣れた様子の
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