桜の木に宿る悪魔~み~
男の
――人でも殺した事でもあるのか。なんだあの据わった目は。
前髪の合間から見える
「くそが。てめぇなんかにビビるおれじゃねぇんだよ!」
男は少し後ずさりしたものの、次の瞬間には恐怖を振り払うかのように、大声を上げながら、
振りかがされた右拳を鼻先でかわし、それとほぼ同時に突き上げられた
仮に周りに見物人がいたならば、死期が迫った人間に対して、死神が鎌を振り下ろすように、容赦のない一撃に見えたに違いない。
足が男の顎を捉えると、糸を切られた操り人形の如く、その場に崩れ、その反動で宙を舞ったカメラは
「女性には優しくしないと駄目だよ。おじさん」
「あ、あの」
「うわっ!」
意識の外からかけられた声に驚き、後ろを振り向くと、先ほどの女性が立っていた。
「そ、そのカメラ」
「ん? あぁ! ごめん、ごめん。ちゃんと取り返したよ。壊れてるとことかないな? 大丈夫?」
そう言って、
会話も早々に、カメラの状態確認に夢中で、
「ん? なに?」
女性は
「うん。君みたいな可愛い女性の『依頼』を断る訳にはいかないからね。どういたしまして」
髪は長く、ウェーブがかかり、胸元まで伸ばしている。前髪は一直線に揃えられていて、タレ目で綺麗な瞳は、
服装はお嬢様ファッションという感じだろうか。綺麗に着こなされた服からは、気品さを感じる。
一点を除いて。
女性の首元に見える黒いチョーカーだ。
「あんなことがあったばかりだし……。目的地までは送ろうか? どこに向かっていたの?」
「そ、そんな。悪いです。」
「いいから、いいから!」
少し強引かな……。でも、このままこの子を放っておくのは良心が痛む。
「うぅ。こ、この先にあるこの辺りでも一番大きな公園です」
「え? 僕もこれからそこに向かう途中だったんだよ! それなら、そこまで一緒にいこう」
「あ、ありがとうございます」
「いいよ。敬語なんて、歳も近そうだし、名前は?」
「わ、私は
「僕は
「は、はい! ありがとうござ……」
お礼を伝えようとするひよりに
「あ、ありがとう」そう言ったひよりの顔はまた赤面していた。
その後、
一方その頃、純次は一足先に現場へと到着していた。
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