第44話 月面基地。 その2

「お待ちしておりました!私は地球宇宙軍、連合艦隊第三艦隊所属のセンバです。第三艦隊司令からお二人の案内を任されました。ミノル・タケヤ大尉殿とラノン・パウロ小尉でございますね!」


 船から降りるとすぐにその兵士はハキハキとした声とビッシっと決まった敬礼をして俺たちの前に現れた。


「私は司令部に来て間もないのでご無礼を働くかもしれませんが、どうぞ宜しくお願い致します!!」


 その勢いに俺は少し懐かしさを感じていると、ラノンがいきなり俺の前に出る。


「あ、よろしく~」


 一発目から、丸出し。こいつはやっぱり威厳もなんもない。

 あの騒動の後、俺たちは表彰を受け、第三艦隊から軍事特例招集ぐんじとくれいしょうしゅうによりある程度上の地位を貰った。軍大出身の俺には宇宙軍大尉、民間人のラノンにも宇宙軍小尉。

 正直やりすぎなほどの昇進、どれほどの力が後ろで働いたのか想像できない程だ。そもそも民間人をいきなり幹部候補にするなんて、頭がおかしい。

 そしてこの態度、やっぱりこいつには幹部軍人は向いていないというか、そもそも幹部軍人になるための教育を受けていない。

 それはそうと挨拶はしないといけない、俺はラノンを後ろに追いやって、その軍人の階級章を見る。一本の線に星一つ【小尉】ラノンと同じ階級、フツーに幹部を案内役に持ってくるなんて司令は一体何を考えているのか……


「宜しく頼む、センバ小尉。少しラノン少尉と話がしたい。少し時間をくれるかな?」


「はっ!わかりました。私はお二人の荷物をお運びし地上行のエレベータ-前で待機しています」


「ありがとう」


 俺はラノンを少し隅に追いやる。


「かっけぇな、ミノル!まるで上司だ!!」


「上司だからな!お前はいくら同じ階級とは言え軽すぎる!!」


「え?偉そうにしたら悪いだろ……」


「お前も幹部軍人だ、もう少し自覚を持って行動しないと。ただですらお前たちはほぼ反則のような昇進をしてるんだ。せめて気品は保て」


「はぁ、そんなこと言われてもなぁ……」


「いいから、今から司令とかお偉いさんに会うんだぞ、しっかりしといてくれ!」


「そこらへんはミノルにお任せだよ」


「だとしてもだ!!」


 ラノンはへいへいと適当に俺の説教をあしらう。


「わかってんのか?」


「わかってるって、流石にお偉いさんにはアホなことしないよ……」


 ホントかこいつ……

 危なっかしいアホを連れて艦隊司令の所に行くとなると、俺までヒヤヒヤする。

 今の艦隊司令長官は確かロク・ヤマモト宇宙軍中将、俺が軍大に居たころはバリバリの現役艦長だったはずだ、噂では頭のおかしい恐ろしい人間。伝統と武士道を重んじ、誰もが一週間で尊敬する人間だとか……


 正直、ヤマモト司令に会うのは俺が一番ビビっていると思う。


「まあ、センバ少尉を待たせるのも悪いし……、絶対アホなことするなよ!!」


「しないって!」


 俺はラノンに念押ししてセンバ少尉が待っているところに向かった。


             ★   ★   ★ 


どうも斑雪です。更新遅すぎますね。すいません。


自主企画にたくさん参加してくれてうれしく、様々な作品を読ませていただいています!


皆さん文章力が化け物です……

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虹宇宙物語~にじそらものがたり~ 斑雪 @yukidayo

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