第7話 神話は語る
「古事記下巻の最初に登場する仁徳天皇は、大阪の巨大な前方後円墳の仁徳天皇陵で有名よね。だから仁徳天皇の時代はすでに古墳時代ってことじゃない?だから、古事記上巻の神話と古事記中巻の天皇記が同じ年代を並列に記述されているとすると、やはり、『神』の付く中巻末の応神天皇と上巻末の鵜葺草葺不合命の辺りを調べていくと弥生時代の終わり頃のことがわかるかも知れないわ。」
「美知いい所に気が付いたね。」
私たちは、さっそく中巻と上巻を比較検討することにした。
「応神天皇のお母さんは神功皇后でしょ、そして、鵜葺草葺不合命のお母さんは海神の娘で豊玉毘賣命ってことは、神功皇后=豊玉毘賣命ってことよね。」
「おい、それちょっと気になるなあ。『豊』って豊受大御神=台与とも同一人物かも知れないぞ。」
「夫の仲哀天皇の記述は少しで、在位9年間の後を神功皇后が引き継いで統治したのよ。だから、仲哀天皇は台与が受け継ぐ前の政治的混乱を来たした男王じゃない?」
「そうなると、うまくつながるな。でも、問題がある。天照大御神の垂仁天皇から仲哀天皇までの間に景行天皇と成務天皇がいるんだ。間が空くのはおかしいよ。」
「待てよ、成務天皇は天孫降臨した邇邇芸命じゃないか。天上界から地上界に降臨したんだから、高天原の統治はしてないんだよ。だから、在位期間ゼロと考えていいんじゃないか。」
「景行天皇も同じかしら?」
「在位期間をネットで調べてみよう。」
「景行天皇と成務天皇の両方とも在位期間は60年だわ。」
「60年?確か前に聞いたことがあるぞ。そう干支だ。干支は、正式にはよく知られている ね・うし・とら・う などの十二支に、十干という甲(きのえ)・乙(きのと)・丙(ひのえ)・丁(ひのと)・戊(つちのえ)・己(つちのと)・庚(かのえ)・辛(かのと)・壬(みずのえ)・癸(みずのと)を60まで組み合わせた60を周期としているんだ。つまり、60年もゼロ年も同じだってことさ。」
「だから、垂仁天皇から仲哀天皇までの間は空いていないってことね。やっぱり、神功皇后は台与ってことね。」
天照大御神 垂仁天皇 卑弥呼
天忍穂耳命 景行天皇 60年→在位無
邇邇芸命 成務天皇 60年→在位無
火遠理命 仲哀天皇 9年在位→男王
↓ ↓
妻 妻
豊玉毘賣命 神功皇后 台与
母 母
↑ ↑
鵜葺草葺不合命 応神天皇
「じゃあ神功皇后のことをもっと調べてみるか。」
「神功皇后は大変な働きをされた方のようで、熊襲や新羅と戦ったりしてるわ。そして仲哀天皇と住んでいたのは福岡市の香椎っていう所みたいよ。」
「海神の本拠地も福岡近辺と聞いたことがあるから、海神の娘である神功皇后もその辺を根拠地にしていたのかも知れないね。」
「そういえば、垂仁天皇の宮を調べたら、卑弥呼の居た邪馬台国の位置がわかるかもしれないわね。」
「師木の玉垣宮だってさ。注釈に奈良県磯城郡と書いてある・・・」
「魏志倭人伝の行程では、鹿児島か宮崎辺りじゃなかったっけ?また難題だな。」
「そういえば、奈良県桜井市にある箸墓古墳は、卑弥呼の墓じゃないかって噂されてるようだよ。」
「じゃあ、邪馬台国は奈良にあったってこと?」
「・・・」
「ここにも何か隠された暗号があるんじゃないのかな?途中で挫けた倭国の範囲を、もう一度チャレンジして、探ってみないか?」
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