第6話 神武の架け橋
古事記上巻の神話が事実を記したものだとすれば、古事記の中巻や下巻の天皇記との関係はどうなるのだろうか?
古事記上巻は、「別天つ神五柱」と「神代七代」の合計十二代の神の羅列と、神代七代の最後の夫婦神である伊邪那岐神と伊邪那美神による国生みと神生みで始まり、その御子として天照大御神と須佐之男命が生まれて高天原を統治することになる。そして最後を見ると、「神倭伊波禮毘古命」が生まれるところで終わっている。
一方、古事記中巻では、この神倭伊波禮毘古命である神武天皇が、日向を発って神武東征するという神武天皇記から始まり、第十五代の応神天皇記で終わっている。
これは一見、上巻から中巻へと直列に話がつながっているように見える。しかし、天照大御神=卑弥呼とすると、卑弥呼が死去した年代は西暦248年頃なのに、神武天皇の即位年代は紀元前660年とされており、辻褄が合わないことがわかる。
『古事記上巻』
別天つ神五柱
神代七代(最後は伊邪那岐神)
・・・
天照大御神
(卑弥呼 西暦248年死去)←--
・・・ |
神倭伊波禮毘古命 |
辻褄が合わない|
『古事記中巻』 |
神倭伊波禮毘古命 |
(神武天皇 紀元前660年即位)←
・・・
第十五代 応神天皇
「神話と天皇記をつなぎ合わせるために、上巻の最後に神武天皇が生まれたことにしたんじゃない?」
「つまり、上巻と中巻は直列ではなく、並列的に同じ年代を表しているってことか。上巻の神の系譜が中巻の天皇の系譜を表しているとしたら・・・」
私たちは、上巻の系譜をウィキペディアで調べ、上巻と中巻から語尾以外に『神』の付く神と天皇を洗い出してみた。
上巻 神産巣日神 神倭伊波禮毘古命
中巻 神武天皇 崇神天皇 応神天皇
「上巻では『神産巣日神』以外には、神武天皇の神倭伊波禮毘古命だけよ。」
「ということは、『神産巣日神』が神武天皇に対応しているんじゃないか?」
「順番に並べてみましょうよ。」私たちは、上巻の系譜と中巻の系譜を並べて比較してみた。
上巻(神話) 中巻(天皇記)
天之御中主神
高御産巣日神
神産巣日神 神武天皇
宇摩志阿斯訶備比古遅神 綏靖天皇
天之常立神 安寧天皇
国之常立神 懿徳天皇
豊雲野神 孝昭天皇
宇比地邇神 孝安天皇
角杙神 孝霊天皇
意富斗能地神 孝元天皇
於母陀流神 開化天皇
伊邪那岐神 崇神天皇
天照大御神 垂仁天皇
天忍穂耳命 景行天皇
邇邇芸命 成務天皇
火遠理命 仲哀天皇
鵜葺草葺不合命 応神天皇
神産巣日神=神武天皇として並べると、終わりがぴったり一致することがわかる。試しに、天照大御神に対応する垂仁天皇記とその前の崇神天皇記を調べてみると、崇神天皇の御子の倭日子命という方の陵に人垣を立てたと記されているが、魏志倭人伝の卑弥呼が亡くなったときも、奴婢を殉葬したことが記されており、共通していることがわかる。垂仁天皇は、伊久米伊理毘古伊佐知命という諱(お名前)を持たれており、「伊久米」は、邪馬台国の官の名前「伊支馬(いきめ?)」とも共通している。
「少しずつ歪みを入れて気づかれないようにしているようだな。日本書紀には垂仁天皇記に野見宿禰が殉葬の代わりに埴輪を立てることを提案したことが記されているらしい。卑弥呼だって、殉葬なんてしてほしくなかったんじゃないかな。」
私は、神話と天皇記も解け合って行くのを感じた。
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