声をたどって

@Rou_000

第1話

「[ホシノツムギ]が必要だよ。昔は存在していたけど、発見された事例が少なすぎる。それでも君は、、、、いや、なんでもないよ。きっとあの谷に行けばあると思うから。うん、お願い……。」

かすれた君の声。

最後の一言「…ありが…とう。」


君の声はもう…


「……は、…ずは〜!かずは?…ねぇ、きいてるの?」

はっと目を覚ます

「あぁ、ごめん。木漏れ日と君の歌聞いてたらつい。どう?[コイチゴ]たくさん取れた?」

僕が伸びをしながら聞くとナナはニコニコの笑顔にピースサインで、

「もちろんよ!ほら、こんなにたくさん取れたのよ!」

嬉しそうにカゴの中を見せてくれた。ひょい、っとひとつ口に入れたらそのコイチゴはとても酸っぱく僕は口をすぼめた。ナナは

「つまみ食いしたバツね!知ってる?コイチゴの甘いのと酸っぱいのの見分け方、ほらここ。ヘタの付け根が白いでしょ?これが甘いの!」

とカゴから取り出してみせてくれた。そのままナナも自分の口にコイチゴを放り込んだ。余程甘かったのだろうか、ほっぺたが落ちそうな顔をしている。

「ナナは物知りだなぁ〜すごいや僕にどれもいっしょにみえるよ」

ふふっと微笑んだ横顔には誰もがキュンとするだろう。続けて、

「これは[ココナノハナ]。傷薬とかに使うのよ!こっちは、[キイハ]よ。やけどに効くわ」

嬉しそうに説明してくれる。ばあ様からナナと[やえの実]と[ツムバ]と[コイチゴ]が足りないからとってきてと頼まれたのだ。村から少し離れたコイチゴの林と、その近くにツムバのしげる滝があった。

「かずは!あったわ」

僕らは初めて採取に出させてもらった。半分は冒険とおなじだった。

ガラスでてきた短刀と、採取したものを入れる入れ物、このふたつを母様に渡された。

「よくお聞き、これは魔物達が嫌う特別なガラスでてきた短剣よ。ガラスの香りでよって来なくなるだろう。もしよってくるなら短剣を太陽に向けなさい。あともう1つ、短剣を月の光に当ててはならないよ。これは必ず守りなさい」

と。

ツムバを見つけた僕達はひと休みすることにした。荷物がおおいうえ、途中で道に迷ってしまい滝に着くまで時間がかかってしまった。滝の水は冷たくてとても美味しかった。「あ!見て!こんなところ[フユ]が生えてるわ!」

ナナは、行く先々で植物を見つけ、喜んでいた。少しずつ採取して持ちかえると張り切ってこの日を楽しみにしていたのだ。


少し昼寝をした。やはり木漏れ日が気持ちよく、ナナの歌はいい子守唄だった。滝の落ちる音と鳥達の囀りも……あぁ、心地いい。


15分くらいだろうかナナは僕より先に起き起こしてくれた。なかなか起きない僕の顔に水をかけて……(トホホ……)。

あとは[やえの実]だけだ。少し先の洞窟の中になると聞いていたら。滝から続く一本道を外れることなく真っ直ぐ。

洞窟には割と直ぐに着いた。

洞窟の入口に根が張っているのに気づくと

「かずは、これ[やえの実]の根よ!この根を辿ればきっとあるわ!」

「ナナ!危ないから1人で走るな。中は……けっこう暗いな。光の魔法お願いしても?」

そう、ナナは村一の魔法士。大人でも取ることの難しい魔法士試験を通ったのだ。


「さぁ歌いなさい!天の精霊たちよ我らに導きの光を!!」

……魔法とは、自分の内に宿る力を詠唱にそって外に出し空気に触れさせることで発動するのだ。感情に左右されることもある。そのため体力は必要不可欠で、成績優秀、身体能力もトップクラスのナナにはもってこいなのである。

ちなみにと言うと僕の父はかつての英雄だった。僕が10にもならないうちに亡くなっている。父から習っていた剣くらいしか取り柄のない僕の体力はそこそこ。人並み以上であると思う。剣の腕は国の運営する、剣の検定試験をトップでクリアするぐらいだ。


まぁ、とにかく[やえの実]を取りに行こう。

「この根いつのものなの?けっこう古いわよね。やえの木があるのは間違いなさそうだが、、、深いわよね。」

ぽた……ぽた……天井から水滴がおちあたり一帯に音がこだまする。


僕はおもいだした。

「ここら辺は似たような洞窟が沢山あるんだ。しかもここ、人が入った形跡が全くない……あ!ナナ!あれ!やえの木だ。」


指をさしたその先に広がる景色。

そこには上から落ちた水が溜まりに溜まって出来たであろう大きな池があった。ナナの光の魔法に照らされて、エメラルドやサファイアのようにキラキラと輝く。

その池の中心に島があり大きなやえの木がしげっていたのだった。


「わぁ、これは、大きいな。さすがにびっくりした。何百年、いや、何千年と生きている立派なものだ。」

僕とナナは見えない木のてっぺんを覗いた。


そしてそいつも、そこにいた。

僕と気とのちょうど間。

「あ、見て〜かわいい!白くてもふもふしてる。うさぎかな?」


いや、ちがう、そいつは……


ナナが手を伸ばした時一瞬声が出なかった。

「…ん、ナ、ナナ!そいつから離れろ!!」

え?と振り向いたナナの手には無数に穴が空いていた。棘が刺さったように。

「っいた!」

モフモフの体は棘のように鋭くなったのが分かるくらいに固まった。威嚇だろう。


僕は急いで、


「水を血とかえ、土は肉と壁を作りもとにもどれ!」

傷を塞ぐ詠唱を唱えた。


そいつが振り返ったとき

「『大きな木には魔物が住む』んだ。」

と思い出したのだった

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