新しい住まい
大きな家財道具は引っ越し業者に運んでもらったが、細々とした段ボールは自分で運ばなければならなかった。
その方が安く済むからだ。
親友の伸枝が朝から手伝いに来てくれていた。
祖母は引っ越し先で必要になる生活用品を揃えるため、ホームセンターへ買い物へ出掛けていた。
まゆ子が住む部屋は少し複雑な間取りだった。
玄関を入ってすぐ左手に3畳ほどの小さな和室があり、向かいあうように右側はトイレとシャワー室になっていた。
短い廊下を抜けると小さなキッチンがついた6畳の和室があり、その右側にもやはり扉があった。そして、中は3畳ほどの小さな和室になっている。
要するに3畳の部屋が2つもあるのだ。
トイレとシャワー室はリフォームされており、まるで取ってつけたみたいに新しかった。
それ以外は古くジメジメとしており、天井や壁には何故できたかわからないシミがいくつもついていた。
伸枝はそれらのシミを見て気味悪そうにしていたが何も言わなかった。
伸枝は繊細な子なのだ。
祖母が帰ってくると彼女の手によって、あっという間に部屋は片付いた。
祖母は家庭的で家の事がとても得意なのだ。
「おばあちゃん、ありがとう!」
まゆ子は祖母に感謝の言葉を述べた。
「なーんもだよ。私に出来る事はこんなことくらいなんだから。」
祖母は笑顔で答えたが、長年一緒に暮らしてきた孫娘の巣立ちに寂しさを抱いているに違いなかった。
「週末には帰るからさ。」
まゆ子が言うと祖母は言った。
「私は大丈夫よ。でも、いつ帰ってきてもいいからね。」
まゆ子は目頭が熱くなった。
夕方になり、祖母が帰り支度を始めた時だ。
「そうそう、スーパーやホームセンターへ行く時は国道沿いを通りなよ。
すぐそこの林の砂利道を通ると近いけど、暗くて物騒だからね。」
祖母が心配して助言してくれた。
まゆ子は素直に「わかった。」と言った。
祖母を見送った後、伸枝と2人でシングルのふとんを2枚並べて敷いた。
伸枝は今晩、ここへ泊まっていくのだ。
布団を敷きおわると、2人で食事に出掛けた。
「ホームセンターとかあるショッピングタウンに美味しいパスタの店もあるみたいよ。」
伸枝が言った。
「じゃあ、そこに行ってみようか。」
2人は薄暗い夕闇の中、ショッピングタウンへと向かった。
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