いわくつきの隣室
年度末の晴れた日、三岸まゆ子は実家から車で1時間30分ほどのA市◯区のアパートへの引っ越しに追われていた。
アパートは2階建てで全部で8つの部屋があった。
まゆ子の部屋は2階の東の角部屋だ。
家賃は破格の値段だった。
まゆ子の住む部屋の隣室が『いわくつき』であることが関係しているようだ。
祖母がそのことについての詳細を訪ねると、不動産屋はあっさりと話してくれた。
8年程前に6歳の男の子が亡くなったという。
虐待によって殺されたのだ。
母親の内縁の夫による犯行で、内縁の夫は遺書を残して自殺したらしい。
亡くなった男の子には姉がおり、事件後、母娘は早々に引っ越したという。
それ以降、その部屋には誰も住んでいないとのことだ。
祖母は別の所にしようと言ってくれたが、私は経済的な事を考え、そのまま契約した。
事件があったのは隣の部屋であり私が住む部屋ではない。
それに、私が入る部屋と『いわくつき』の部屋以外の部屋は全て埋まっていた。
私が住む部屋も3月まで独身女性が住んでいたが、結婚するため引っ越していったらしい。
では、特に気にすることもないような気がしたのだ。
それに私自身、本当に怖いのは『霊』などのスピリチュアルな存在ではない。
生きている人間ほど怖いものはないということを私は幼くして心に焼き付けられたのだから。
私は18歳だが、今まで1度も人を好きになったことがない。
特に男性に対して強い嫌悪を抱いている。
それをあからさまに態度に出したりはしないだけで男性など信じるに値しない存在だと思っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます