第五話 あさま山荘事件の跡地にいってきました。
昭和の大事件の一つあさま山荘事件。
あさま山荘に立てこもった赤軍派は、人質をとり数日にわたり、警察に銃で乱射し、自分達の思想のために満身していた。
テレビではリアルタイムで放送され、視聴率89%という国民の大半がこの時代の流れに反抗する若者達と治安を守る警察との戦いをみていた。
その銃撃戦は死人もでるくらいの大事件だ。
20代の若者達は、死をも恐れない確固した信念があったのだろう。
私はそのあさま山荘事件の跡地にいってきた。
栃木に住んでる私にとっては、車で200キロくらいの距離だ。
栃木から、群馬を通り、長野へ。
そこは、避暑地で有名な軽井沢。
事件の現場は、軽井沢のなかでも以外にも高級住宅街のあたりで驚いた。私は、あさま山荘というほどなので、もっと山深いとこかと想像していた。
山の一角にあるモダンな建物の群れは異国の地を訪れた気分だ。
その場所の名はレイクニュータウン。
私が出向いた3月下旬は、人影が見当たらず、まさにゴーストタウン。
洒落た喫茶店のマスターらしき人物が、店の外を掃除していた。私の中では、ここでの第一村人発見。
「すいません。ちょっと場所教えてほしいんですが。あさま山荘事件の場所がこの辺りだと聞いたんですが、知ってますか?」
第一村人は、その問題の答えはもう用意してますよ。と言わんばかりに場所を教えてくれた。
きっと私の他にも何人もの人が、事件の跡地の場所を、この人に聞いたのだろう。
私は教わった通りにレイクニュータウンの中の道を歩いた。まだお昼にも満たない時間だ。日は十分にある。追いたてられるものは腹の虫だけだが、我慢できるレベルだ。
焦らず、教わった道を右に左に曲がっていくと、断崖絶壁にたてられたような建物の赤い屋根がみえてきた。当時の映像を何度となくテレビでみていた私は、一目でわかった。
『ここだーー。ついたー。』
おい茂った木が、当時の映像を鈍らせているが、確かにここだ。玄関が当時のままで、ここから警察が鉄球をぶつけ、真冬の中、放水したのがここだ。
建物は、老朽化が進み、一年に数回訪れる主を待つような別荘の役割をかろうじて果たしてるような感じだった。約45年前ここで左翼的思想をもった五人の若者が立てこもり武装化し銃を乱射した。
それは、当時の学生運動の最終到着地のようにも感じる。
日本政府、警察を敵にまわし、行き場がなくなってもなお彼らは抵抗しつづけ闘った。
弾丸一発で人間が死ぬ。それをわかったうえで、何十発と機動隊めがけて放った。
その銃で数人の警察官は倒れ、真っ白の雪の道を、真っ赤に染めた。
人を殺してまで、達成したいこと。私にはよくわからないが。それを革命か、テロか、というと世論的な結果論というように考えると、どちらにゆれても紙一重に感じる。
私は、建物周辺をぶらぶらと徘徊していた。
下側に出た私は、建物を見上げ、当時のニュースでやっていた難攻不落の要塞を数分見上げていた。
事件後に生まれ育った私は、その後を生き、昭和、平成、そして新しい時代に、移り変わったが、日本がよい方向にむかっているかは正直わからない。世論を左右するマスコミ、警察、政府。民主主義の多数派ほど恐ろしいものはないと私は思う。
あの時代に生きた若者は多数派には負けない、固い信念があったのだろう。
今の時代を生きる私は何が正しいか、何が間違っているのか、わからなくなるときはある。
孤独な一人旅 こわれせんべい @momen-kinutoufu
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