第116話 最終回 ゴリラ
金田一
「さあて、お次は誰かな?」
司会
「金田一先生、この会もいよいよ最後の方となりました」
金田一
「そうか、もうそんなになるのか!」
司会
「はい、もう3日にわたり100人以上を審議してきましたからね」
金田一
「司会さんも3日間、お疲れ様でしたね。最後の提訴は誰かな?」
司会
「はい、最後はゴリラです」
金田一
「ゴリラ?そもそもゴリラのことわざや慣用句なんてあるのか?」
司会
「さぁ、私にもよくわかりません。直接本人に聞いてみることにしましょう。それではゴリラさん、お入りください」
ゴリラ
「こんにちは。初めまして、よろしくお願いします」
司会
「こちらこそよろしくお願いします」
ゴリラ
「聞けば、どうやら私が最後らしいですね」
司会
「はいゴリラさんが最後になります。有終の美を飾りましょう。ところでゴリラさん今日は何を提訴され行きましたか?」
ゴリラ
「よくわからないんですが、『ゴリ押しする』と言う言葉を見直してほしいです」
司会
「あ、よく使いますね。無茶な計画とか賛成の少ないプロジェクトなどを強引に推し進めること言いますね」
ゴリラ
「そうなんです。押すのはわかりますが何で頭に私たちの『ゴリ』が着いているのかがわかりません」
司会
「それはやはり馬鹿力、いやパワーがあるゴリラさんが力強く押すイメージからではないのですか?」
ゴリラ
「そもそもこれって私たちのことを指すんですか?」
司会
「え?私はずっとゴリラさんがゴリゴリ押すから『ゴリ押し』だと思ってましたが。金田一先生教えてください」
金田一
「はい、ゴリラさんが正解です。明らかに勘違いですね。そもそもゴリラさんが発見されたのは1847年でその後日本に紹介されましたからまだ日本人にとっては慣用句になるほど馴染みがありませんね」
ゴリラ
「やっぱり。正直、無理やりに物事をおし進めることの悪い意味に使われてあまりいい気持ちではありませんでした」
司会
「というとゴリの語源は何ですか?」
金田一
「はい、その語源は川魚の『ゴリ』からきています」
司会
「へー、ゴリという魚がいるんですか」
金田一
「はい、ハゼ科のゴリは、水底の石の間にへばりつくようにじっとしていることが多いんです」
司会
「その魚と強引に押し進める関連性がわかりませんが」
金田一
「このゴリを捕まえる時には、ワラの束を川底につけ、雑巾がけをするように前へ進みながら、網の中に追い込んでいきます。このように、川底にワラの束を押しつけるようにして、石にへばりついたゴリを追い込む方法を『ゴリ押し漁』と言います。この様子から、無理矢理押し進む『ゴリ押し』という言葉が生まれました」
司会
「なるほど、そういう事だつたんですね。ゴリラさんよかったですね疑惑が晴れて」
ゴリラ
「はい、これでハッキリしました。最近の若者は『五里霧中』も私たち『ゴリラが夢中になること』と勘違いする人がいるみたいですね」
司会
「あ、私の娘も『ゴリ夢中のスイーツ』なんて平気で誤って使っていますよ」
金田一
「しかし後100年もするとそれが正しい用法になるかもしれませんね。ことわざ、慣用句はその時代に即した使い方が要求されるモノですからね」
司会
「ですから100年に一回この審議会があるわけですね」
金田一
「そうです。次回はこの世にいる自信がありませんが、次の世代にいいバトンを渡したいものです」
司会
「そうですね。そういう意味ではいい審議会になったと思います。長らくの審議、先生ありがとうございました。お疲れ様でした」
完
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