第106話 犬 4回目
金田一
「はい、次は誰かな?」
司会
「次はまたしても犬ですね。4回目の登場となります。それでは犬さん、どうぞお入り下さい」
犬
「何度もすいません、なんかここは居心地がいいんでまた来ました」
司会
「大丈夫ですよ。1日1回のルールですから心配なさらずに。早速ですが今日は何を提訴されますか?」
犬
「今日は『犬が西向きゃ尾は東』を提訴したいと思います」
司会
「一般には、『しごく当たり前』のことを指しますよね。当然ですよね犬さんの頭が西を向いてるんですから反対側にある尻尾は東を指していますね」
犬
「そうなんですが、そもそもこれって別に我々犬じゃなくてもいいんじゃないんですか?例えば猫や馬や羊や牛でも同じことだと思うんですが。なんでわざわざ犬なんでしょうね?」
司会
「なるほど、たしかにそうですね。でもそれは前も言ったように我々と犬さんとの距離感の問題だと思いますよ。今日の提訴内容は要するに辞退なんですね」
犬
「いや、辞退と言うよりはどうせ誰がやっても同じことだから、われわれは引き受けるとして、ちょっと言いたいことがあるんです」
司会
「はあ、言いたいこととはなんですか?」
犬
「私たちはよく知っての通り、うれしいときは尻尾を振ります。すると、丸まった尻尾の先は時々頭と同じ方向の西を指すことがあるんです」
司会
「あ、わが家で飼ってる犬もそうですね。確かに嬉しくて尻尾を振る場合は顔と同じ方向を向いてますよね」
犬
「おわかりいただけましたか?犬には例外の時があるということを。むしろ喜怒哀楽の無い馬や牛のほうが例外がないと思います」
司会
「なるほど。要するにこのことわざの連投はするが例外を認めて欲しいっていうことですね」
犬
「はいそうです。話しが早くて助かります」
司会
「と言う事ですが金田一先生よろしくお願いします」
金田一
「私も犬を飼っていますけれども、いつも私が家に帰ったときには嬉しがって本当に尻尾は頭と同じ方向を向いてますね。犬さんの言う事は正当だと思いますね」
犬
「はい。だから動物の中で我々だけは『例外がある』と言うことをお含みおき願いたいんです」
金田一
「わかりました、それではこうしませんか。明日からは『犬が西向きゃ尾は東(嬉しい時を除く)』ではいかがでしょうか?」
司会
「あ、期間を限定するわけですね。それはいいアイディアです。犬さんいかがでしょうか?」
犬
「はい、これなら我々も気兼ねなく尾を触れると思います。今まではこのことわざのために割と気を遣って尾を振っていたことから解放されます」
司会
「あ、今までは気を遣って尾を振ってらっしゃったんですね」
犬
「はい、そうなんです。しかしこれで皆喜んで尻尾を振ると思います。ありがとうございました」
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