第102話 ナマズ

 金田一

「さて、お次は誰かな?」


 司会

「次はナマズですね。初登場ですね、それではナマズさんどうぞお入り下さい」


 ナマズ

「こんにちは。はじめまして。今日はよろしくお願いします」


 司会

「はい、はじめまして、ナマズさん早速ですが今日提訴したいことわざは何でしょうか?」


 ナマズ

「やはりあれですね、『ナマズが怒ると地震が来る』ですね」


 司会

「これはよくいいますね。私は子供の頃なんかは地震は絶対ナマズさんが起こしてると思ってましたから。でもなんでナマズさんが怒ると地震が来るんでしょうかね」


 司会

「本人が言うのもなんですけども、私にもよくわかりません。て言うかそのために今日ここに来ました」


 司会

「なるほどわかりました。要するに今日の提訴は地震とナマズさんの関係をハッキリさせたいのですね」


 ナマズ

「はい。だから東北大震災の時なんかも皆さんから、『頼むからこれ以上暴れないでくれ』と言われて正直困りました」


 司会

「わかりました。と言う事ですが金田一先生、よろしくお願いします」


 金田一

「はい。まずはナマズさんと地震の関係ですが古く『日本書紀』にまで遡ることができます。茨城県の鹿島大明神も地震を起こすナマズ退治の話があります」


 ナマズ

「はー、やはり昔からの悪役なんですね」


 金田一

「はい、また安土桃山時代の豊臣秀吉が伏見城築城の折に家臣に当てた書状に『ナマズによる地震にも耐える丈夫な城を建てるように』の指示がありますね」


 司会

「やはり古い言い伝えなんですね」


 金田一

「はい、また江戸時代の安政地震の時には日本列島の下には大ナマズがいて時々暴れる説が主流となりました。この大地震の後には200種を超えるナマズ絵が出回りました」


 ナマズ

「いや、そもそも私たちは日本列島の下に住んでいませんしそんなに大きなサイズではありません」


 金田一

「わかりました。最近では地質学や地震学が大いに進歩して地震の原因は日本海溝や南海トラフにあるプレートが大陸の下に潜り込むことが原因だということがはっきりわかっています」


 ナマズ

「そこまで科学ではっきりわかっているんであれば、もう私たちの出番は無いじゃないですか?言ってみればこれは冤罪ですよね」


 司会

「確かにそうですね。ナマズさんは何千年もの間この冤罪に苦しんでいたと言う事ですね」


 金田一

「それでは『冤罪でナマズは怒るが地震は来ない』でいかがでしょうか?」


 司会

「いいですねそれ。『ほんとにナマズさんは怒っていますけれども、今までの通説のように怒っても地震は来ないから安心してください』と言う意味ですね」


 金田一

「そうです。この辺が落としどころだと思いますがいかがですか?」


 ナマズ

「はいわかりました。今まで気をつかっていましたが、これで今日からは安心して怒ることができます。ありがとうございました」



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