第88話 かたつむり

 金田一

「さてと、お次は誰かな?」


 司会

「次は初登場のかたつむりですね。それはかたつむりさんどうぞ入りください」


 かたつむり

「こんにちは。はじめまして」


 司会

「はじめまして」


 かたつむり

「あの、ここはことわざだけではなく歌も良いと聞きましたが、大丈夫ですか?」


 司会

「はい。前回も黄金虫さんが来て、歌の内容を変えましたから多分大丈夫だと思います。ねえ、金田一先生?」


 金田一

「はい、内容次第ですが大丈夫ですよ。黄金虫の前例もありますし」


 司会

「と言う事ですが、今日の提訴内容は何でしょうか?というか歌なんですよね。かたつむりさんの歌と言えば1つしかないですね」


 かたつむり

「はい。『でんでんむしむし、かたつむり』です」


 司会

「やっぱり。この歌の何が気にくわないのですか?」


 かたつむり

「最後の『つのだせ やりだせ あたまだせ』です」


 司会

「あ、これは私も子供心に不思議だったんです。つのやあたまはよくわかりますが、『やり』って何ですか?かたつむりさんはそんな物騒なもの持ってるんですか?」


 かたつむり

「お恥ずかしい話ですが『やり』は私たちの生殖器のことなんです」


 司会

「えー、人間で言うおチンチンですか?」


 かたつむり

「はい。そうです。無垢な子供の童謡に『おチンチン出せ』と言うのは、さすがに教育上いかがなものかと思って今日の提訴に踏み切りました」


 司会

「なるほど、よくわかりました。知らないこととは言え、かなり恥ずかしい歌だったんですね。それでは金田一先生よろしくお願いします」


 金田一

「はい、かたつむりさんの『やり』は『恋矢(れんし)』と呼ばれる白い槍状の器官を指します。ふだんはアタマの下のほうに隠れています。しかし『やり』は交尾の時に出てきて、恋の矢として相手に突き刺し生殖行為をします」


 司会

「やはり生殖器なんですね。あのお堅い文部省の唱歌にしては破廉恥ですね」


 かたつむり

「はい、特に女の子に大きな声で歌われると聞いていてこちらが恥ずかしいです」


 金田一

「それでは明日からはこうしましょう。『つのだせ やりかくせ あたまだせ』ではいかがですか。我々人間もいつも隠していますから」


 かたつむり

「はい、これなら女の子に歌われても恥ずかしい思いはしません。今日はありがとうございました」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る