第87話 トンビ 2回目
金田一
「はい、お次は誰かな?」
司会
「次はトンビですね。2回目になります。それではトンビさんどうぞお入り下さい」
トンビ
「はい前回の『トンビが鷹を産んだ』ではありがとうございました。今日もよろしくお願いします」
司会
「はい。早速ですがトンビさん。今日はどの言葉を提訴されますか?」
トンビ
「そうですね。やはり『トンビに油揚げをさらわれた』ですね」
司会
「あ、これもよく使われる言葉ですね。もう少しで手に入りそうなものが、いきなり横からサッと誰かにとられてしまい呆然とする時に使いますね」
トンビ
「はいそうなんです。でも油揚げを取られて呆然とするような人が、今いますかねって言うか油揚げそのものを最近見ないですよね」
司会
「たしかに・・・」
トンビ
「しかも、このことわざってやっぱり私たちトンビが悪者になってますね」
司会
「はい、油揚げをさらうというの行為は一応刑法で言う所の窃盗罪に当たります」
トンビ
「どうせ悪者になるんだったら、本当にさらわれてぼう然となる位のものを取りたいと思います」
司会
「要するに『取る対象物』が油揚げだと不満だと言う事なんですね」
トンビ
「はいそういうことです。価値が低過ぎます」
司会
「と言うことらしいですが、金田一先生よろしくお願いします」
金田一
「わかりました。『トンビに油揚げをさらわれる』とは、不意に横から自分のものになると思っていたものや大事なものを奪われることを意味することわざです。また、奪われて呆然とする様子を指すことも多くあります」
司会
「ですからトンビさんは、呆然とするモノを希望しています。そもそも何で油揚げなんでしょうかね」
金田一
「さらわれるものがなぜ油揚げなのかについてですが、トンビさんがこれを好物としているというわけではありません。昔は人間が稲荷神社にお供えするものとして油揚げがあり、トンビさんがそれを奪っていったことに由来していると言われています」
司会
「なるほど、神社のお供え物だったんですか」
金田一
「それと江戸時代や明治時代には油揚げ、すなわち天ぷらと言うのは非常に高価なものだったんですね。今のようにコンビニでちょっと買い物できるようなものではなかったんです」
司会
「だから取られて、呆然とするわけですね」
金田一
「しかし現在は子供でも買えるスナック化しましたよね。すなわちこの100年間で油揚げの価値が変わったと言う意味ではこの提訴は有効です」
司会
「よかったですね。トンビさん」
金田一
「現代では、横からさっと取られて呆然とする代名詞としてスマホがあります。またサイズ的にもトンビさんが掴みやすい大きさです。ですから明日からは『トンビにスマホをさらわれた』にします。多分これには異論がないと思います」
司会
「なるほど。私もよくスマホを無くして呆然としますので、このことわざにぴったりですね」
金田一
「さらにこのことわざの欠点もこの際見直します」
司会
「欠点ですか?」
金田一
「はい、このことわざは長すぎますね。すなわち言うのに苦労します」
司会
「たしかに」
金田一
「略して『トンスマ』に変えます」
司会
「いいですね。言いやすいし、何より覚えやすい!どうですかトンビさん」
トンビ
「はい。スマホは今の社会にとって大切なものですから非常に満足です。また気になってた言葉の長さも修正していただきありがとうございました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます