第86話 メジロ
金田一
「さていよいよ審議も4日目に入りましたね。今日は誰からかな?」
司会
「はいメジロですね。初登場です。それではメジロさんお入りください」
メジロ
「こんにちは、初めまして。今日はよろしくお願いします」
マスクをつけたメジロが入ってきた。
司会
「やはりメジロさん、あれですか最近のコロナでマスクをつけてらっしゃるんですね」
メジロ
「そうなんです僕たちメジロは免疫力が低い体の弱い鳥なので、特に相手から移されないよう気をつけています」
司会
「良い心がけですね。ところで早速ですが今日はどのことわざを提訴されますか?」
メジロ
「はい。やはり『メジロ押し』です」
司会
「あ、この言葉もよく使いますね。大人数が詰めかけて隙間がない状態ですね。ラッシュ時の山手線や、人気のイベント会場などでよく使われますよね」
メジロ
「はい。私たちメジロが木にとまるとき、多く並んで押し合う性質のあるところから出た言葉と聞いています」
司会
「はい、電線の上にたくさんメジロさんが並んでるのはよく見る光景ですよね。ところで今日の提訴内容を教えてください。
メジロ
「はい。今司会さんがおっしゃった電線の上に私たちがたくさん並んでいる光景はもうありません」
メジロ
「え?もうないんですか?」
メジロ
「そうです。今回のコロナ騒動によってメジロとメジロの間に空間を置くように義務付けられました。要するに距離を取らなければダメなんです」
司会
「そうなんですか!人間界と同じですね」
メジロ
「そうです。だからこの言葉の意味を変えて欲しいんです」
司会
「わかりました。金田一先生よろしくお願いします」
金田一
「『メジロ押し』には二つの意味があります。
1 多くの人やものがすき間なく並ぶこと。
2 子供が一列に並んで押し合い、列外に押し出された者が列の端について押す遊び
です」
司会
「あ、昔子供のころよく遊びました」
金田一
「今ならこの遊びは完全に『三密違反』ですね。要するに今回のメジロさんの提訴内容は意味の変更ですね」
メジロ
「はい、現在ではメジロ2羽分を空けて等間隔に並んでいますから」
金田一
「なるほど。では明日からは『メジロ押さず』に変更します」
司会
「先生、意味は何でしょうか?」
金田一
「この言葉の意味は『人やものが秩序を保って整然と並んでいる様』を表します。要するにルールに従って整頓がきちっとできている例えです」
司会
「なるほど。高速道路の街灯なんかが『メジロ押さず』と言われるのですね」
金田一
「はい。鉄道の枕木なんかもこれに当たりますね」
司会
「どうでしょうか?メジロさん。問題ないですよね」
メジロ
「はい問題ありません。実際に現在はそういうルールで並んでますので言葉の通りです」
司会
「では明日からこれが施行されます」
メジロ
「ありがとうございます。早くコロナが治まれば良いですね」
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