第84話 豚
金田一
「さて、お次は誰かな?」
司会
「次は豚ですね。3回目になりますね。それでは豚さんどうぞ」
豚
「はい、こんにちは。いつもいい裁きを見せるので今日はまたきました」
司会
「お褒めにあずかり光栄です。ところで今日は何を提訴されますか?」
豚
「ズバリ『豚に真珠』ですね」
司会
「あ、これもよく使いますね。価値のあるものを、その価値がわからないものに与えても無駄だと言う例えですよね」
豚
「はいそうです。これって完全に私たち豚を馬鹿にしてますよね」
司会
「馬鹿にしてるかどうかわかりませんが、少なくともリスペクトはしてないですね」
豚
「実は豚の世界もインターネットが普及して、いろんな情報が簡単に手に入るようになりました。さらに我々は毎日暇なもんですからいろんな情報を検索して過ごしてます」
司会
「あ、そうなんですね」
豚
「私は特に、昔から言われてる『豚に真珠』と言う意味が気に食わなくて子供の頃から真珠の専門家になろうとインターネットを通じていろんな情報を仕入れてきました」
司会
「そうなんですか。すごいですね!しかしほんとに真珠の価値が分かるんですか?」
豚
「じゃぁ、試しに会場の女性で真珠をつけてる人を何人か集めてください」
司会
「わかりました。なんかはじめてのケースですね。すいませんが、会場で真珠のネックレスなどをつけている人は壇上に上がってきてください!」
真珠のネックレスをつけた女性が3人壇上に上がってきた。
司会
「豚さん、これわかりますか?」
豚
「はい、全部わかります。えーとこれは綺麗なピンク色の真珠ですね。宇和島産ですね。今相場はいいですから高く売れますよ」
司会
「えー、見ただけでよくわかりますね」
豚
「はい次の方。この青い真珠は珍しい!ブルーの真珠は『ナチュラルブルー』と『コバルトブルー』の2種類に分けられます。 特に『ナチュラルブルー』はとれる量が少なく希少です」
司会
「す、凄い!」
豚
「はい、次。これは干渉色が綺麗ですね。干渉色とは真珠層が厚く巻くことによって生まれる色です。干渉色は2種類の色(ピンク系とグリーン系)に分けられます」
延々と続く真珠の品評会。
司会
「いやー、すごいですね。失礼ながら豚さんが、真珠の価値をこれほど知ってると思いませんでした。という事は今日はことわざの変更ですよね?」
豚
「はい、豚の世界では今『真珠ブーム』なんです。ほとんどの豚が真珠の価値が分かりますから是非意味を変更してほしいと思って参りました」
司会
「これは参りました!金田一先生よろしくお願いします」
金田一
「しかし豚さん、凄い知識量ですね。恥ずかしながら人間の私が聞いていても全然理解できませんでした」
豚
「いや、全てネットのおかげです」
金田一
「その知識量を評価して、明日からは『豚は真珠の専門家』に変更します」
司会
「実際その通りですよね。意味はなんですか?」
金田一
「かつてモノの価値がわからなかった人でも時間をかけて勉強すれば、価値がわかるという例えです。我々人間も学ぶところが多いです」
司会
「はい。いい戒めになりますね。豚さんいかがでしょうか?」
豚
「はい、理解していただきましてありがとうございます。いつまでも『価値がわからない存在』の代表が否定されて納得しました」
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