第83話 猫 3回目
金田一
「さてお次は誰かな?」
司会
「次は猫ですね。3回目になります。それでは猫さんよろしくお願いします」
猫
「はい、毎日ご苦労様です。また来ました」
司会
「さて猫さん。今日は何を提訴しにきましたか?」
猫
「今日はなんといっても『借りてきた猫のよう』ですね」
司会
「あ、よく使いますね。いつもよりおとなしく元気がない人に『なんだか今日は借りてきた猫みたいだな』とか」
猫
「そうなんですけど。ぶっちゃけ実際、私たち猫の貸し借りってやってますか?」
司会
「いやー、少なくとも私は借りたこともないし、貸したこともないですね」
猫
「そうでしょう!現代社会において猫の貸し借りは存在しません」
司会
「はい、聞いたことありません。ところで今日の提訴内容はなんですか?」
猫
「ちょっとこれを見てください」
紙を司会に渡す猫。
司会
「なんですか?この紙は?」
猫
「実はこのたび、私たち複数の猫が出資して新会社を設立しました。おとなしい特性を逆に生かしたニュービジネスです。これはその説明書です」
司会が紙を読む。
ニュー・ビジネス
猫をお貸しします!
ストレスの多い現代社会、あなたも可愛いネコで癒されてみませんか?
1日コース 5000円
3日コース 1万円
どの猫もまるで「借りてきた猫」のようにおとなしいです!
まずは御一報を!
司会
「いや、チャレンジャーですね!たしかに今のギスギスした社会のスキを突いたビジネスでニーズがありそうですね」
猫
「はい、ですから今日はこのことわざを宣伝に使えるように変えて欲しいのです」
司会
「わかりました。金田一先生よろしくお願いします」
金田一
「昔は家に出たネズミを捕るために、猫を飼っている人に頼んで貸し借りを行なっていました。家に住み着いたネズミは米や穀物など食料を荒らすため、とても迷惑な存在です。猫はネズミを本能のまま退治していました。まあ、トムとジェリーですね」
司会
「えー、実際に貸し借りがあったんですか!」
金田一
「はい。ネズミを駆除するために猫の貸し借りをしていましたが、他人の家に行くと猫は大人しくなってしまい目的を果たさないことがよくあったそうです」
司会
「なるほど、それが語源なんですね」
金田一
「猫は自分の領土以外だと、疑心暗鬼になり自由に行動できなくなる習性がありますからね」
猫
「はい、勝手が違う他人の家では本来の戦闘能力が落ちました」
金田一
「このように、いつもは飛び回ったり好き放題している人が状況が変化すると静かになる様子を『借りてきた猫』という言葉にしました。しかしネズミがいなくなった現代では、このことわざは、たしかに時代遅れですね」
司会
「なるほど、よく分かりました。宣伝に使えるように変更して欲しいとのことですがいかがでしょうか?」
金田一
「それでは、時代遅れのことわざを変更して『借りてきた猫で癒されよう!ただ今割引キャンペーン中』ではいかがですか?」
司会
「いいですね。いきなりビジネスモードになりましたね」
金田一
「はい、ベンチャー企業のスタートアップのいい宣伝になると思います」
猫
「ありがとうございます。宣伝効果抜群です!是非また仕事に疲れたら弊社までお越し下さい!」
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