第79話 ムジナ

金田一

「さて、お次は誰かな?」


司会

「次は初登場のムジナですね。ムジナさんどうぞ」


ムジナ

「はじめまして。今日はよろしくお願いします」


司会

「ムジナさんはたしかアナグマですよね」


ムジナ

「はいそうです。れっきとした熊科目に属していますが、毛の色などが似ていることから人間からはタヌキと呼ばれます」


司会

「なるほど、要するにタヌキてはなくクマなんですね。ところで今日提訴したいことわざはなんですか?」


ムジナ

「はい。やはり『同じ穴のムジナ』ですね」


司会

「これはよく使いますね。一見、無関係のようにみえるが実は同類、仲間であることのたとえで、基本的に悪者に対して用いますね」


ムジナ

「どう考えても、やはり悪いことわざですよね」


司会

「『どうせお前たちは同じ穴のムジナだろうが』のように使いますね。意味は『所詮は悪党同士だろう?』と疑惑付きの言葉ですよね」


ムジナ

「はあ、なんか聞いてるだけでやるせないですね」


司会

「と言いますと?」


ムジナ

「ハッキリ言って、人間世界でいう『濡れ衣』ですね」


司会

「え、濡れ衣ですか?」


ムジナ

「はい、私たちは基本的に悪いことはしない動物なんです」


司会

「しかし我々人間はムジナと聞くと『悪いイメージ』しかありません」


ムジナ

「はあ・・・実は穴掘りができないタヌキは、穴掘り上手な私たちアナグマの古い巣穴を利用したり、時には同居したりします」


司会

「え?それじゃあ自宅の不法占拠じゃあないですか?」 


ムジナ

「そうなんです。しかも奴らときたら決して家賃を払いません」


司会

「金田一先生、大変です。緊急事態です」


金田一

「そうなんです。これはれっきとしたタヌキの不法占拠です。しかもタヌキは『人をだます』という印象があるので、どうせ同居しているムジナも同じように悪事をするのだろうということからこのことわざができました」


司会

「ひどい!まさに濡れ衣ですね」


ムジナ

「はい、家賃は払わず占拠されて、なおかつタヌキの悪事の汚名を着せられて踏んだり蹴ったりです」


金田一

「わかりました。ムジナさんの提訴を受けて、明日からは『同じ穴のムジナは大迷惑』にしましょう」


ムジナ

「はい、まさにその心境です」


司会

「意味は何でしょうか?」


金田一

「意味はわかりやすく大阪弁で言うと『お前ら、ええ加減にせいや!』です」


司会

「なるほど大激怒した時に使うのですね」


金田一

「はい、同義語は『堪忍袋の緒が切れた』ですね。ムジナさん、いかがでしょうか?」


司会

「ムジナさんどうでしょうか?」


ムジナ

「いやー!スッキリしました。今までその言葉を散々言いたかったんです。今日はありがとうございました!」



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