第76話 イタチ
金田一
「さーて、お次は誰かな?」
司会
「はい、次はイタチですね。それではイタチさんどうぞ」
イタチ
「はじめまして。今日はよろしくお願いします」
司会
「こちらこそ、よろしくお願いします。早速ですがイタチさん、今日は何を提訴されますか?」
イタチ
「はい、ズバリ『イタチごっこ』ですね」
司会
「あ、『イタチごっこ』ですか。よく使いますね『警察と泥棒のイタチごっこ』だとか、何度やっても同じことの繰り返しという意味で使われますよね」
イタチ
「そうなんですが、これって私たちイタチは関係ありますか?」
司会
「確かにそう言われてみればそうですよね。『ごっこ』は遊びの意味として、なんでイタチさんが出てくるんでしょうか?」
イタチ
「でしょう?なんで私たちが『延々と同じようなことが続く』例えになるのか不思議なんです」
司会
「たしかに・・・」
イタチ
「ことわざっていうのは元来物事をわかりやすくするためにあるものですよね」
司会
「そうです」
イタチ
「しかしこの『イタチごっこ』はむしろわかりにくいと思うんですが、いかがでしょうか?」
司会
「それはありますね。普通に使ってますが、なんか言葉だけが完全に一人歩きしてるような感じですね」
イタチ
「ご理解ありがとうございます」
司会
「わかりました。金田一先生、よろしくお願いします」
金田一
「もともとイタチごっこは、江戸時代後期に流行った子供の遊びで、二人一組となり、『いたちごっこ』『ねずみごっこ』と言いながら相手の手の甲を順につねっていきます。両手が塞がったら一番下にある手を上に持っていき、また相手の手の甲をつねるという終わりの無い遊びなので、転じて『埒があかず、きりがない』ことも指すようになりました」
司会
「へー!そんな遊びがあったんですね。しかし今の子供たちは絶対やってませんよね」
金田一
「はい、もう見ることはありませんね。しかし言葉だけは残って、現在では双方が同じことを繰り返して物事の決着がつかないこと、つまり堂々巡りの状態をいいます」
イタチ
「要するに次々に上に乗せていくだけの遊びなんでしょう?我々イタチは関係ありませんよね」
金田一
「はいそうです。ただ単に語呂がよかったんでしょうね」
司会
「ところでイタチさん、今日の提訴内容は何でしょうか?この言葉からの辞退ですか変更ですか?」
イタチ
「辞退ですね。理由は以下の二つです。1 現代の子供たちは『イタチごっこ遊び』をしない。2 そもそも我々イタチは『堂々巡り』をイメージさせない」
司会
「なるほど、理路整然ですね。わかりやすいです」
金田一
「それではこうします。『堂々巡り』をイメージしやすい動物に変えます」
イタチ
「その動物とは何でしょうか?」
金田一
「ウロボロスです」
司会
「あ、知ってます。自分の尻尾を飲み込むヘビか龍ですね」
金田一
「そうです古くから世界各国の神話に登場する空想上の生き物です。明日からは『ウロボロスごっこ』ではいかがでしょうか?ちようど同じ名前の金曜ドラマもありましたから馴染みがあります」
司会
「いいですね。『堂々巡り』を簡単にイメージできます」
イタチ
「完璧です!今日は来たかいがありました。ありがとうございました」
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