第63話 鳩
金田一
「さあ次は誰かな?」
司会
「次はハトですね。それではハトさんどうぞ」
ハト
「こんにちは、はじめまして」
司会
「今日はよろしくお願いします。早速ですがハトさん、今日は何を提訴されますか?」
ハト
「やはり昔から言われている『鳩が豆鉄砲を食らったような顔』、これを是非提訴したいと思います」
司会
「一般には、『突然豆玉が当たって、目をまん丸にしてびっくりしたような顔』のことですよね。『死んだ父親に借金があることがわかり、鳩が豆鉄砲を食らったように驚いた』のように使いますね。これが何かご不満ですか?」
ハト
「はい。それはよくわかるんですけれども、そもそも豆鉄砲って最近見ますか?」
司会
「いや私も子供の時に夜店で見たきり、最近は見かけないですよね」
ハト
「でしょう?私の子供たちがよく言うんです『お父さん豆鉄砲食ったときの顔ってどういう風にすればいいの?』と。そもそも見たことのないものなので子供たちも反応の仕方がわからないから不安なんでしょうね」
司会
「そうですね。我々人間も見たことないぐらいなので当人の鳩さんはもっとわかりづらいでしょうね。金田一先生よろしくお願いします」
金田一
「はい確かに最近は豆鉄砲は見なくなりましたね。豆鉄砲とは、豆や丸めた紙などを弾丸にして撃つ鉄砲に似せた玩具のことです」
司会
「たしかに昔、紙を丸めて撃った記憶があります」
金田一
「日本では一般に竹筒を用いて作成され、筒に息を吹き込んで飛ばすものや、弓状の竹の反動を使って飛ばすものなどがあります」
司会
「なるほど竹が材料だったんですね。私の時代はプラスチックの筒でした」
金田一
「私たちが子供の頃は、よく竹林に入って竹を切って豆鉄砲を作ったりしました。しかし今の子供たちには馴染みがないものなんでしょうね」
ハト
「そうなんです。だから私たちも豆鉄砲に当たるどころか、見たことも無いので説明が難しいのです」
金田一
「わかりました。そうはいってもハトさん生活の中で驚くことってありますよね」
ハト
「最近は世の中が平和になりましたから、あまり驚く事は無くなりました。われわれは平和の象徴ですから誠に喜ばしいことです」
金田一
「最近では何が1番驚きましたか?」
ハト
「そうですね・・・最近ならコロナ・ショックで株が大暴落したことかな?」
司会
「え?ハトの世界でも株取引が流行っていてるんですか?」
ハト
「はい、最近はインターネットで売買できるので簡単になりましたから密かなブームになっています」
金田一
「そうですか。という事はその大暴落したときに『目をまん丸くされた』わけですね」
ハト
「はいそうです。特に信用取引でロスカットされた日の朝なんかは豆鉄砲の比ではありませんでした。証拠金がすべて吹っ飛びましたから」
金田一
「では決まりですね。明日からは『鳩がロスカットされたような顔』でいかがですか?」
ハト
「あ、これなら実際に目をまん丸にした顔を見たから、子供たちに説明しやすいです」
金田一
「では、明日から変更します」
司会
「よかったですね。わかりやすくなって」
ハト
「はい、しかし本当に目をまん丸くなるような事態は遠慮したいですね」
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