第62話 豹(ヒョウ)
金田一
「はい、お次は誰かな?」
司会
「はい、次はヒョウですね。それではヒョウさんお入り下さい」
ヒョウ
「今日はよろしくお願いします」
司会
「はい、こちらこそ。ヒョウさんの今日の提訴はなんですか?」
ヒョウ
「ズバリ『豹変する』ですね。って言うか私たちが登場する言葉はこれしかありませんよね」
司会
「なるほど『豹変する』ですか、すぐに態度が変わる人の事ですよね。『あの人はお金の話になると態度が豹変する』と言うふうに使われますよね」
ヒョウ
「そうなんだが、なんで我々ヒョウが『すぐに変わる人の代名詞』になっているのかが理解に苦しむ」
司会
「本当ですね。言われてみれば、なんでヒョウさんがコロコロ変わる代名詞になっているんでしょうね?」
ヒョウ
「というか、そもそも日本の人たちは我々ヒョウの生態を知ってるのか?」
司会
「いや、申し訳ないですが全く知りませんね。ヒョウを見かけるのは動物園の中か、大阪で歩いてる豹柄のおばちゃんぐらいなもんですからね」
ヒョウ
「だろうが。全然生態も知らない縁もゆかりもない動物を持ってきて悪い意味に使っていることを何とも思わないのか?」
司会
「わ、わかりました。ということですが、金田一先生助けてください」
金田一
「これは我々日本人と言うよりも、むしろ中国の故事から来てることわざですね。もともとは『君子豹変する』と言って、意味は『賢い人は注意されたら態度をすぐに改める』と言ういい意味に使われていました」
ヒョウ
「しかし現在では良い人が瞬間に悪い人になると言う反対の意味にも使われているぞ」
金田一
「何百年も使っているうちに『急に態度が変わること』に変化したんですね」
司会
「なるほど、それはわかりました。でもなぜコロコロ変わることにヒョウさんが使われるんですか?」
ヒョウ
「そうだ。瞬時に変わる例えで同属の『猫の目のように変わる』があるだろうが。コロコロ変わるなら猫を使ってくれ」
金田一
「あ、それはヒョウの背中にある斑点が原因なんです。もともとはヒョウの斑点は黒色なんですけれども、季節が変わるときれいな色に変わるのです。その変化の様を見た人が『黒から綺麗な色に変わること』を『豹変する』と言うふうに表現したわけですね」
ヒョウ
「見てみろ!何か当初の使い方と変わってきてるじゃないか。我々の変化率は地味なんだぞ!急にコロコロ変わる悪いイメージがつきまとっていてこちらとしてはいい迷惑だ!」
司会
「まあまあ、ヒョウさん。ここは落ち着いてください」
ヒョウ
「もっと言えば、我々の斑点の模様が変わるのは年間に一回だけだ。そんなに素早く『猫の目のように』コロコロは変わらない!」
金田一
「そうですね。むしろゆっくり毛が生え変わって行きますよね。しかし現代では『瞬時に変わる』悪い意味で使われています」
ヒョウ
「とにかく意味が豹変し過ぎだ!なんとかしろ」
金田一
「わかりました。ではこうしましょう。少し長くなりますが『大阪の豹柄おばちゃん変』ではいかがでしょうか?意味は同じです」
ヒョウ
「なんだその変化は?ちょっと話についていけないが・・・」
金田一
「大阪のたいてい豹柄パンツをはいているおばちゃんは、短気で本家のヒョウよりも態度がコロコロ変わります」
司会
「あ、私の知り合いのおばちゃんなんかさっきまで笑っていたのに、いきなり大激怒しますよ」
金田一
「大阪の豹柄おばちゃんの方がこの役はヒョウさんよりも適任と思いますが」
ヒョウ
「うーん、要するに我々とその『大阪のおばちゃん』とやらが入れ替わるわけだな」
司会
「そうですよ。汚れ役はこの際『大阪のおばちゃん』に任せましょうよ」
ヒョウ
「大阪のおばちゃんに主役を奪われたようだが、まあ我々『豹』の一文字が入っているからよしとするか」
司会
「そうですよ。全部譲ったわけではありません。ここは決断しましょう!」
ヒョウ
「わかった、ではそれで頼むとするか」
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