第61話 鷲(ワシ)

金田一

「はい、お次は誰かな?」


司会

「次はまた鳥が続きますね。鷲です。それでは鷲さんどうぞ」


「はじめまして」


司会

「さすがに目つきの鋭い猛禽類の鷲さんが入ってくると緊張しますね」


「そういうふうに褒められたら嬉しいな」


司会

「ありがとうございます。ところで今日は何を提訴しに来ましたか?」


「ズバリ『鷲鼻』だ」


司会

「えー、綺麗な鼻の形をしている人に使ういい言葉じゃないですか?このことわざのどこが不満なんですか?」


「そもそも俺の鼻をよく見てみろ」


司会

「あ、ぺったんこですね。穴が開いているだけです」


「そうだ。俺たちの鼻は人間が褒めるようなきれいな形をしていない」


司会

「ほんとですね。むしろ本人を前にしていうのもアレですけど、むしろ不細工な方ですね」


「はっきり言うタイプだな」


司会

「すいません。しかしなんで『鷲鼻』がきれいな形の鼻の意味になったんでしょうね?金田一先生よろしくお願いします」


金田一

「これはもう完全に人間サイドの間違いですね」


司会

「ま、間違いなんですか?」


金田一

「そもそも『鷲鼻』とは鷲の鼻の形を指すのではなく、鷲のくちばしのしかもその先の形状を指します」



司会

「なるほど。それなら納得できます」

目の前の鷲のくちばしの先端を見て納得する司会。


金田一

「つまり『鷲鼻』とは、鼻筋が弓のように湾曲して、先がとがった形になっている鼻を指します。男性には褒め言葉になりますが、女性には不人気と言われています」


「なんと、女性には人気がないのか?」


金田一

「見た目に鋭い印象があるため、女性特有の柔らかさがないのでキャリアウーマンを自負するような女性以外は不人気ですね」


「いずれにしろ、間違いを訂正して欲しい」


金田一

「わかりました。明日からは長くなりますが『鷲のくちばしの先っちょ鼻』でいかがでしょうか?」


司会

「あ、それならイメージしやすいですね」


「なるほど『鷲のくちばしの先っちょ鼻』か。たしかにウソにはならんな」


金田一

「少し長くなりますが、これは人間サイドが負担します」


司会

「鷲さんいかがでしょうか?」


「わかった、スッキリした。ありがとう」




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