第54話 金魚
金田一
「さあ、次は誰かな?」
司会
「えーと。次は金魚ですね。では金魚さんどうぞ」
金魚
「はじめまして。今日はよろしくお願いします」
司会
「金魚さんはじめまして、こちらこそよろしくお願いします。早速ですが、金魚さんの今日の提訴はなんですか」
金魚
「はい、すばり『金魚のフンのようなやつ』です」
司会
「あ、よく言いますよね。『うちの課長は部長に金魚のフンのようにどこでもついていく』とかよく使いますね」
金魚
「そうです。私もことわざに登場するのは嬉しいのですが、汚い言葉の『糞』とワンセットで語られているのが非常に不愉快です」
司会
「そうですよね。他のことわざで『糞』がつくようなのは滅多にないですもんね」
金魚
「お察しいただけましたか?」
司会
「はい、お気持ちはよくわかります。では今日はこのことわざを、どうされたいんですか?」
金魚
「はい、意味の変更をお願いします」
司会
「とは言いますが、やっぱり我々から見たらいつも金魚さんには長い糞がついていて、ある意味これはワンセットのような気がするんですけれども、どうですか?」
金魚
「じゃぁ、この紙を見てください」
金魚は1枚のパンフレットを司会に手渡した。
司会
「なんですかこれは?」
金魚
「TOTOから出た新商品のパンフレットです」
パンフレットには
「新発売!金魚向けウォシュレット登場」と書いてある。
司会
「はー、金魚向けウォシュレットですか・・・」
金魚
「はい、なんでもこのメーカーは人間のマーケットは全部売り尽くしたようで、私たち金魚のマーケットに新規参入したようです」
司会
「なるほど。という事はこのウォシュレットを使うと、今までのように長い糞はついてこないっていうことですね」
金魚
「はい、そうです」
司会
「流石はTOTOさんですね。糞の切れが悪い金魚マーケットにいち早く参入するとは!チャレンジャーですね」
金魚
「司会さん、実際にちょっと見てください」
とお尻を司会に見せる金魚。
司会
「ほんとだ、いつもの糞がついてないですね。いやー、きれいなもんです」
金魚
「でしょう?」
司会
「というわけですが、金田一先生よろしくお願いします」
金田一
「はい、まず『金魚の糞』と言うと私たちの世代はショーケンが主演した『傷だらけの天使』と言うテレビ番組を真っ先に思い出します」
司会
「はあ・・・」
金田一
「若い頃の水谷豊扮するあきらが『兄貴ー兄貴ー』とついていくのに対してショーケンが『お前なー!金魚のフンみたいについてくるなよ』って言う名セリフが有名でしたよね」
司会
「はあ・・・」
金田一
「まあ、その話はさて置き。金魚さんは実は魚の中で一番肛門の筋力が弱い部類に入ります。ですからなかなか糞を断ち切れなかったんですよね」
金魚
「そうなんです。私たちも子供たちを教育するときには『なるべくお尻に力を入れなさい』って言うんですけども、なかなか上手く切ることができません」
金田一
「人間世界もこの100年間で、トイレ事情は大きく変わりました。汲み取り式から水洗便所、そして洋式トイレ、最終的には今のウォシュレットまで登場してきました。しかし金魚の世界でも同じだったんですね」
金魚
「はいそうです。ですから今日はこの意味を変更して欲しいと思っております」
金田一
「わかりました。ではこうしましょう。金魚のフンという切っても切れなかったモノが最先端技術によりスパッと切れたわけです」
金魚
「はい」
金田一
「ですから『最先端技術にスパッと切られた人』の例えではいかがでしょうか」
司会
「なるほど。うちの親父なんかAIが出てリストラされましたから、間違いなく金魚のフンになりますね」
金田一
「そうですパソコンができない上司なんかももう立派な『金魚のフン候補』になります。これでいかがでしょうか?」
金魚
「はい分りました。それで満足です」
意気揚々と金魚は帰っていった。
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