第52話 青大将
金田一
「さーて、どんどん行きますよ。お次は誰かな?」
司会
「次はヘビの仲間の青大将ですね。それでは青大将さんどうぞお入りください」
青大将
「こんにちは、今日はよろしくお願いします」
司会
「はい、青大将さん。敢えて今回は『ヘビ』での提訴ではないんですね」
青大将
「はい、私たちの呼び名に関する事なので」
司会
「わかりました青大将として提訴されるのですね。では提訴内容を教えてください」
青大将
「先ほどのやりとりを聞いていて、ここはことわざ以外でも提訴はOKなんですよね?」
司会
「はい、金田一先生の説明では、提訴内容を考えて必要であれば可能とのことです。ねえ先生?」
金田一
「はい内容次第です」
青大将
「それを聞いて安心しました」
司会
「じゃあ、青大将さんの提訴はことわざではないって言う事ですね。っていうか青大将が入ったことわざはそもそもありませんよね?提訴内容は一体なんですか?」
青大将
「はい。ズバリ私たちの名前です」
司会
「名前?名前が気に入らないと?いい名前だと思いますが?」
青大将
「はい、私たちは蛇の中でも特別にジャンル化されていて『青大将』と言われているのはご存知だと思います」
司会
「そうですね。私も子供の頃山の中で『ヤバい!青大将が出た!』と言ってワーワー大騒ぎした記憶があります。でも最高の階級の大将っていうのはいい名前じゃないですか?」
青大将
「そこなんです問題は。確かに『若大将シリーズ』とか『お山の大将』、『あんたが大将』とかに使われる大将っていうのは軍隊の組織の中では1番上の地位になるいい言葉ということは我々も存じています」
司会
「じゃあなんで不満があるのですか?」
青大将
「私の友達にコテコテのミリタリーオタクがいまして、なんでも今の時代の自衛隊では大将と言うのは古い呼び名だと言うのです」
司会
「え?古い呼び名?」
青大将
「はい、ちょっとこれを見てください」
司会に紙を差し出す青大将
司会
「この紙はなんですか?」
青大将
「はい、現在の自衛隊の階級を示した表なんです」
紙には左側に昔の旧日本軍の階級と右側に現在の自衛隊の階級名が書かれていた
少尉ー3尉
中尉ー2尉
大尉ー1尉
少佐ー3佐
中佐ー2佐
大佐ー1佐
少将ー将補(海将捕、陸将捕、空将捕)
中将ー将(海将、陸将、空将)
大将ー幕僚長
司会
「あ、」
青大将
「ね。わかりますよね、問題は一番下なんです」
司会
「大将は今では幕僚長というのですね」
青大将
「そうです。昔の大将と言う呼称は今の時代では存在しないらしいのです」
司会
「大変です、金田一先!大将と言う言葉はすでに死語らしいですよ!」
金田一
「そのようですね。今は幕僚長と言うふうに名前が変わってると聞きます。ちなみに海自では海上幕僚長、陸自では陸上幕僚長、空自では航空幕僚長と言いますね」
青大将
「でしょう?やはり大将と言うのは古い時代の人にとっては非常に憧れを持ったいい言葉なんですが、今の若い世代には何か時代遅れと言うか、古臭い感じがするらしいのです」
司会
「なるほど・・・」
青大将
「しかも、特に私たちの子供の世代からは『お父さん、何とか古臭い大将という名前を変えてもらえないか』と迫られている次第なのです」
司会
「世代間ギャップですね、わかりました。じゃあ今日の提訴内容は青大将の名前そのものの変更ですね?」
青大将
「はい。そうなります」
司会
「金田一先生いかがでしょうか?この提訴はそもそも有効でしょうか?」
金田一
「よくわかりました。この会の趣旨は時代にそぐわない言い方を変えると言うことなので、趣旨に合っていると判断いたします。つまり提訴は有効とします」
司会
「よかったですね青大将さん」
青大将
「はい、今日来たかいがありました」
金田一
「それでは、単純にさきほどの表に従って明日から『青大将』を改め『青幕僚長』でよろしいですか?」
青大将
「はい、これで息子たちにも顔が立ちます!できれば生活圏が山の中なので海自や空自と区別するために『青陸上幕僚長』でお願いします」
司会
「しかし、山の中であなたたちを見つけた子供たちには負担をかけますね。『あー、ヤバい!青陸上幕僚長だ!逃げろー』って少し長いですね」
金田一
「あ、それは時が解決しますよ。すぐに慣れます。ついでにいい機会ですから『お山の大将』と言うことわざもこの場を借りて『お山の幕僚長』と言うことに変更します」
司会
「よかったですね青大将さん。あ、すいません青陸上幕僚長さん!」
青陸上幕僚長
「ありがとうございました」
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