第50話 釈迦

金田一

「さて、次の方」


司会

「金田一先生。や、やばいですよ!次はなんとお釈迦様が来られています。それではお釈迦様どうぞ」


釈迦

「よろしくお願いします。動物でない私なんかがこちらに来てもよかったでしょうか?」


司会

「いやお釈迦様、滅相もないです。すでに神様の中の雷神様も来られていますから大歓迎ですよ。ねえ、先生?」


金田一

「はい、ようこそいらっしゃいました。大歓迎いたします。というかあまり普段から腹を立てないお釈迦様が何が御不満なのか、正直興味があります」


司会

「そうですよね。っていうか、お釈迦様が登場することわざってそんなにないですよね。あ、あれですか?『釈迦に説法』ですか?」


釈迦

「いえ、違います」


司会

「では今日はどのことわざを提訴されますか?」


釈迦

「はい、ズバリ『お釈迦になった』です」


司会

「あ、よく使いますよね。例えば車で大事故をしたら『車がお釈迦になった』って言いますよね。確かになんでお釈迦様が出てくるんでしょうね?不思議です」


釈迦

「でしょう?不思議に思いますよね?自分で言うのもなんですけれども、私の名前っていうのは人間たちにとって良い例えには使われてもこのように『全損』とか『全壊』のような縁起の悪い例えに使われる事が不思議でならないです」


司会

「そうですね。お釈迦様になることがなんで壊れる意味になるのでしょうか?金田一先生よろしくお願いします」


金田一

「わかりました。お釈迦様、これは全く人間サイドの落ち度です」


釈迦

「ほう、少々の落ち度なら御仏は許す。詳しく話してはもらえないか?」


金田一

「その昔、仏像を作る職人が阿弥陀仏像を作ろうとして間違って釈迦像を作ってしまいました。せっかくの苦心作がダメになったのが語源です」


釈迦

「理由はわかりましたが、今一つ府に落ちないですね。間違えて私の像が出来たことが何か悪いことのようですね」


金田一

「いえ、阿弥陀仏が上とかお釈迦様が下とかの問題ではなく、『目標としていたものが出来なかった』という意味合いが強いです」


釈迦

「なるほど、では反対に仏像職人が釈迦像を作ろうと思ったが間違えて阿弥陀仏像が出来てしまったらどうなっていたのかな?」


司会

「それはやはり車が全損した時は『あー、車が阿弥陀になった』って言うことになったでしょうね」


釈迦

「そうですね。ではそろそろ変えてもらえませんか?」


司会

「変えるって。阿弥陀様にですか?」


釈迦

「はい、1000年以上私は汚れ役をやったわけですからこの辺りで阿弥陀仏に変えていただきたいです。これが今日の提訴内容です」


金田一

「そうですね。たしかに潮時かも知れませんね。明日からは『阿弥陀になった』としましょう!」


司会

「し、しかし一方で阿弥陀様は大丈夫でしょうか?」


釈迦

「ああ、それならば心配ありません。来週飲み会がありますからその席で阿弥陀にはちやんと伝えますから」


金田一

「わかりました。明日から施行しますのでよろしくお願いします。くれぐれも阿弥陀様と喧嘩なさらないように」


釈迦

「あはは、釈迦に説法ですよ」



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