第47話 カエル 2回目

金田一

「さてと、お次は誰かな?」


司会

「はい、昨日に引き続きカエルなんですがまだ見えてませんね。時間厳守って言ってあるのですが」


カエル

「ここです、司会さんの足元にいます」


司会

「あ、すでにこちらにいらしたんですね。すいません小さいから見えていませんでした」


カエル

「どうも、よろしくお願いします」


司会

「はい、よろしくお願いします。カエルさん今日は何を提訴されに来ましたか?」


カエル

「はい『カエルの子はカエル』です」


司会

「一般に『普通は親と子はよく似て生まれてくる』という例えですね。プロ野球選手の子が野球が上手い時などに使われますね」


カエル

「これ、別に私たちカエルでなくてもいいんじゃないですか?」


司会

「といいますと?」


カエル

「例えば『ライオンの子はライオン』でも『犬の子は犬』でも意味は同じですよね」


司会

「それはそうですね。考えてみれば『当たり前』のことですよね。1+1=2という当たり前のことを殊更言っているようなものですね」


カエル

「司会さん、ここで質問です。犬の子は何と呼びますか?」


司会

「え、子犬ですよね。普通」


カエル

「では猫の子は?」


司会

「子猫ですよね」


カエル

「はい、生まれた時から親に似て、サイズが小さいから『小馬』『子牛』『子羊』などと呼びますよね」


司会

「はい、それが何か?」


カエル

「お分かりになりませんか?」


司会

「はい、まだ話が見えませんが」


カエル

「では私たちカエルの子はどう呼びますか?」


司会

「それは、『子ガエル』・・・あれ?そんな単語はありませんよね」


カエル

「はい、私たちカエルの子は『オタマジャクシ』という立派な名前があります」


司会

「本当ですね!なんでですかね?」


カエル

「それは子供のカエルの姿が成人カエルと全く違うからです」


司会

「なるほど、つまりカエルさんの提訴は

『動物界で一番、親と子の姿が違うカエル』がわざわざこのことわざに登場する意味を問うているのですね」


カエル

「その通りです。カエルの子はオタマジャクシです」


司会

「わ、わかりました。金田一先生よろしくお願いします」


金田一

「カエルさん、まさにこのことわざはおっしゃる通り『ことわざ界の謎』なんです」


カエル

「えー、そうなんですか!」


金田一

「はい、カエルの子はオタマジャクシと誰もが認知しながら誤った形でズルズル使われてきました」


カエル

「ご理解いただきまして助かります」


金田一

「しかも親と子で姿形が似てないどころかエラ呼吸と肺呼吸ですから、これはもう『違う生き物』と言っても過言ではありません」


カエル

「でしょう?全く違うのに『所詮親子はよく似ている』例えにされているのは憤りを感じます」


金田一

「提訴内容はよくわかりました。ではこれでいかがでしょう?『カエルの子はオタマジャクシ』意味は『親子でも全く似ても似つかない』ということで」


カエル

「なるほど『トンビが鷹を生んだ』に近いですね」


金田一

「いえ、『トンビが鷹を生んだ』は才能が無い親から才能ある子供が生まれた場合で『カエルの子はオタマジャクシ』はそもそも姿形が似てない例えです」


司会

「なるほど使い分けできますね」


カエル

「いいですね。長年の誤解が解けてよかったです」


司会

「カエルさんよかったですね。また100年後にお会いしましょう」


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