第45話 ノミ
金田一
「はい、お次の方は誰かな?」
司会
「あ、ノミですね。それではノミさんどうぞお入りください」
ノミ
「こんにちは」
どこからか、か細い声が聞こえてきた。
司会
「ノミさんいるんですか?」
ノミ
「はい」
司会
「って、どこにいるんですか?」
ノミ
「さきほどから司会さんの目の前にいます」
司会
「え、分かりませんが、目に見えないほど小さいんですね。わかりました、私の目の前にいるとして皆様に聞こえるようにマイクを用意します」
ノミ
「はいご配慮ありがとうございます」
司会
「ところでノミさんは今日は何を提訴されにきましたか?」
ノミ
「はい、『ノミの心臓』です」
司会
「一般には『すぐにドキドキする、気の小さな人のこと』を指しますよね。いかにも小さなノミさんのさらに小さな心臓のことを指して非常にわかりやすい諺だとは思うんですが」
ノミ
「はい、でも私たちの心臓は皆さんが思うよりも非常に丈夫なんです」
司会
「といいますと?」
ノミ
「司会さんは私たちの運動能力をご存知ですか?」
司会
「えーよく知りません。とにかくよくジャンプすることは聞いていますが」
ノミ
「私たちは後脚の力が強く、垂直方向に身長の60倍の高さをジャンプできます」
司会
「それは凄いですね。人間に例えると約100メートル垂直にジャンプできるようなものですよね」
ノミ
「また水平方向には身長の100倍跳躍することができます」
司会
「これまた凄い。人間なら170mの幅跳びができるということですね。オリンピック選手も真っ青です」
ノミ
「さらに自分の体重の100倍のものを運ぶことができます」
司会
「人間なら6トンですね。トラックかバスを運ぶような感覚ですね。とにかく凄いですね」
ノミ
「でしょう?この暴力的な運動力を出しているのが私たちの心臓なんです」
司会
「破壊的なパワーですね」
ノミ
「一説によると、NASAの研究機関では私たちの心臓をこのサイズで今の科学で再現すると2兆円の開発費が必要だとか」
司会
「え!するとプチってノミを潰したら2兆円が飛んでいくのですか?」
ノミ
「まあ、そうなりますね。私たちをプチって50回やったら日本の国家予算が飛びますね」
司会
「えー!金田一先生、大変です。助けてください」
金田一
「昔からノミさんの破壊的なパワーは有名でした。実際に海外では『ノミのサーカス』と言ってノミに大きなものを運ばす見せ物もありましたからね」
ノミ
「はい、かなりこきつかわれました」
金田一
「わかりました。要するにノミさんの提訴内容は意味の変更ですね」
ノミ
「そうです、なんか弱っちい惨めなイメージを変えて欲しいのですが」
金田一
「ではいかがでしょうか、明日からは真逆の意味で『コンパクトで非常にタフ』の代名詞として使いましょう」
司会
「なるほど、マラソンの優勝者に『素晴らしいノミの心臓で42.195kmを見事に走り切りました!』とか言うのですね」
金田一
「はい、人間だけでなく車のCMなんかも『高性能ノミの心臓V6エンジンを搭載』などと高評価の例えになります」
ノミ
「いいですね!来年の東京オリンピックで是非使ってください。ありがとうございました」
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