第44話 猫 2回目提訴

金田一

「はい、お次は誰かな?」


司会

「あ、昨日に続いて猫ですね。それでは猫さんどうぞお入りください」


「こんにちは」

猫が小さな箱を持って登場した。


司会

「はい、猫さん。昨日はお疲れ様でした。早速ですが今日の提訴は何ですか?」


「はい、『猫に小判』です」


司会

「なるほど、『豚に真珠』と同義語で一般には『価値のわからない者に高価なものを与えても意味がない』という例えですね」


「はい。そうなんですが、私たち猫が『価値がわからない』と断言されているようですが、まずはこれを見て下さい」

そう言うと猫は小さな箱を司会に手渡した。


司会が、箱を開けると中から小判を抱えた可愛らしい「招き猫」の置物が出てきた。

太陽電池が内蔵されているのであろうか、終始「ピョコピョコ」と猫が手を招いている。


司会

「あ・・・」


「ね?猫は何を持ってますか?」


司会

「小判・・・ですね」


「はい、これは値打ちを知ってなければあり得ない組み合わせですよね」


司会

「はい」


「しかも海外では『マネキネコ』は非常に流行っていて、既に『ゲイシャ』や『フジヤマ』のように固有名詞になっています」


司会

「そうなんですか!たしかに『猫に小判』の割りには招き猫は小判を持ってるのは不思議な話ですね」


「でしょう?」


司会

「それでは今日の提訴内容を教えて下さい」


「小判を持っている招き猫と『猫に小判』の矛盾を見直して欲しいのです」


司会

「分かりました。たしかに矛盾していますね。それでは金田一先生よろしくお願いします」


金田一

「私も先日、ベトナムに行きましたが多くのレストランに招き猫を置いてあるのを見て驚きました」


「でしょう?私たちは日本の文化拡散に多大な協力をしてるんです」


金田一

「たしかに『マネキネコ=商売繁盛』の概念を国内のみならず海外まで広げた貢献は大ですね。それではその貢献に敬意を表してこうしましょう。『猫に小判』の意味を大幅に変えます」


「意味は何ですか?」


金田一

「意味は『クールジャパンを海外に伝えるチャレンジャー』ではいかがですか?」


司会

「なるほどいい意味ですね。和太鼓を海外で演奏している人などもこれからは『猫に小判』と呼ぶわけですね」


「いいですね。180度意味が改善され、矛盾も解決されました」


司会

「猫さん、よかったですね」


「はい、満足しました」


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