第42話 鷹 2回目提訴


「はい、お次は誰かな?」


司会

「昨日に引き続き鷹ですね、それでは鷹さんどうぞ」


「昨日はありがとうございます。ショボい茄子がお寿司に変わりみんな喜んでましたよ」


司会

「それはよかったですね。そう言われるとこの委員会をやる甲斐があるというものです。ところで今日は、どのことわざがお気に召しませんか?」


「はい、『能ある鷹は爪を隠す』です」

司会

「え、鷹さんがリスペクトされたいいことわざではありませんか?いったい何が御不満なんですか?」


「ああ、時代が変わって若い世代が爪を隠したがらなくなったのです」


司会

「一般には『能力や地位が高い者ほど謙虚に実力を隠す』とされているいい例えですよね」


「はい、昔の我々の世代はこの言葉を規範として生きてきたのですが、最近の若い世代たちが町中で有名なネイリストがやっているネイルサロンに行き爪をアートするのが流行ってるのです。さらに彼らは『爪を隠す』どころか、非常にカラフルな爪を自慢するように見せびらかします」


司会

「わかります。私の妻も年甲斐もなく娘と競い合うようにネイルアートをやって喜んでますね」


「はい、私の娘なんかは今では全部の指が違う色ですよ。見ていて『謙虚』からは程遠いですね。」


司会

「うちの娘も似たようなもので、高いラメなんか入れてキラキラさせています。こずかいの大半を突っ込んでいるんじゃあないでしょうか?」


「しかも昨年は『第一回 鷹の爪アートグランプリ』なんかが開催されて、昔のように『爪を隠す』文化はもはや過去のことになりました」


司会

「はー、時代が変わったら文化が変わり性格も変わっていくものですね」


「そうなんです。娘には『お父さんたちの世代は、そもそも自己表現が乏しすぎる』と逆に怒られている次第です。また『お父さんの爪は汚くてダサい』とか言われて我々の世代にも嫌々ながらネールアートをやり出す連中がでる始末ですよ」


司会

「なんか今まで培ってきた『高貴な鷹さん』のイメージが台無しですね。わかりました、金田一先生よろしくお願いします」


金田一

「なんか聞いていると、鷹さんの世界も凄い事になっていますね。それではこうしませんか?少し変えて『アートな鷹は爪をさらす』です。意味は読んで字のごとくです」


司会

「あ、それなら若い世代の鷹にも受けそうですね」


「なるほどな。それなら娘からもガタガタ言われなさそうだな」


司会

「むしろもっと自己顕示欲の高い『アートな鷹』が出現しそうですね」


「まあ、私的には『なんとなく譲った感』があるが大きな時代の波には勝てないからな」


金田一

「それでは決定と言うことで、明日からこのことわざは施行されます」


「はいわかりました」


司会

「鷹さん、今日はどうもありがとうございました」


「はい、こちらこそ」


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